暁 〜小説投稿サイト〜
ソードアート・オンライン ―亜流の剣士―
Episode2 迷宮少女
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った俺が壁に触れようとする寸前、足に何かが当たった。宝箱じゃない。

それは、膝を抱え小さくなった女の子だった。体を細かく震わせ、必死に気配を殺しているようだった。

この事態に驚かない者がいるはずない。実際俺も心底驚いている。だが何故か、可笑しなくらいすんなり彼女に手が伸びた。彼女の手を掴み、その華奢な体を引き上げる動作に強烈な既視感を覚える。記憶が強く刺激され、もう少しで思い出せそうだ。

(そうだ、この子は)

引っ張られた少女が俺を見上げる。大きな丸い瞳が俺を捉える。顔にかかっていたセミロングの赤い髪が後ろに流れ、丸い輪郭の顔がはっきり見えた。

「んやっ…!」


拒絶するように少女が俺の腹を突き飛ばした。かなり強いそれにフラフラと後ずさるが、そのことで俺の記憶は完全に覚醒しきった。

――俺はこの子と会っている。

そうだ、一層のあの森で俺はこの子に今と同じことをし、同じように拒絶された。髪の色は違うが、間違いなくあの時の女の子だ。

何故ここにいるのかは分からない。どうしてこんなにも怯えているのかも。それでも、俺はこの子に声をかけたかった。話したかった。あの日以来の感覚が帰ってくる。

「君と俺、会ったことあるの覚えてるかな?」

声をかけると少女は明らかに怯えた。背に負う少女の体格と不釣り合いな剣に手が掛けられる。

「やっ、来ないで…来ないでよぅ!!」

絶叫とともに躊躇わず剣が抜かれた。近づく俺の喉元すぐのところを剣が通り過ぎる。突然のことに慌てた俺は後ろに下がる足を縺れさせた。

「あっ…」

その声が俺のものなのか少女のものなのかも分からないうちに、強かに後頭部を床へと打ち付けた俺は強烈な痛みとともにあっさりと意識を失った。


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