暁 〜小説投稿サイト〜
魔法使いへ到る道
8.雪やこんこ、猫やこんこ
[2/4]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
プして飛び込み跡をつけて喜ぶなのは。ふわふわの新雪を手のひらで掬いお互いに掛け合うお嬢様方。丸めてオーバースローで放り投げる俺。湧き上がる悲鳴。そして始まる三対一の総力戦。
 闘争の本質は数ではなく質であるということを証明するかのように、序盤こそは俺が圧倒的優位に立っていた。走り回りながら敵からの攻撃から逃げ、途中集めた雪を上手く当てる。
 敵も馬鹿ではない。運動神経が切れまくっているなのはを後方に回し補給係とし、運動能力の高いすずかとアリサを砲台として活動させ始めた。中々いい手だ。褒めてやろう。
 そして発生する不幸な事故。ノリで九十度近いカーブを決めようとした瞬間、スリップ。面白いように転がりながら俺は雪にまみれた。
 そこからはもうただの一方的な蹂躙。雨霰と降り注ぐ雪球たち。いくらなのはの投げ方がへっぴり腰とはいえ、十分に近づいて投げれば当たるもの。
 三人が息を荒くし肩を上下させる頃には、俺の姿は白い山の中に消えていたという。
 そして俺はその時埋もれていた雪を使い一人用のかまくらを作り上げ、以来ずっとそこに引き篭もっているのだ。冷たい風が吹いてこないだけで十分暖かいと知った。
「……ケンジくん、大丈夫?ふるえてるよ?」
 ああ、すずかよ。心配そうに俺に声をかけてくれるのはお前だけだよ。だけど俺は忘れない。俺が転んだ時一番力強くスローイングをしていたのはお前だということを。
「アリサちゃーん、なのはちゃーん、ケンジくんもさむそうだし、そろそろお家入ろー」
「そうしようぜー。お前らも服濡れてるだろうし、そのままにしてたらカゼひくかもよー」
 二人がかりでの真摯な説得により、いつまでも遊びを続けようとしていたなのはとアリサも渋々ながら動きを休めた。
 徐々にだが勢いを増してきた降雪の中を進み、屋敷の扉を開ける。木製だよ木製。きっと高いよ。
「ふぃー」
「ふにゃー」
 暖房が効いた室内はまるで楽園のようだった。思わずなのはと一緒に気の抜けた声を漏らしながら玄関口に敷かれた絨毯の上に寝転がる。
 って、虎じゃん。
「ちょっとー、汚いわよ、二人とも」
「ちゃんと体についた雪をおとさないとだめだよ」
「「はーい」」
 ばほばほと厚着していたジャンパーの前を開いてはためくかせ、ぴょんぴょんとその場で跳ねて粗方落とす。
「お帰りなさいませ、すずか様。それにみなさまも」
「外は寒かったでしょう。温かいお茶の用意ができてありますので、良かったらどうぞ」
 月村家に仕えるメイドの姉妹、ノエルさんとファリンさんがいつの間にか傍にいた。着ていたジャンパーやマフラーを渡して外套掛けに掛けてもらう。それが彼女達の仕事なのだし、なにより今の俺では背が届かない。
 いやー、なんか俺も馴染んでるけど、普通家にメイドとかいないよねー。どこに
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ