第一幕その十二
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第一幕その十二
「ヴォータンはかつてその剣を一本のトネリコの幹に突き刺した」
「そうだったな」
「そうだ、我等にとっては少し前の話だ」
既に相手のことは完全にわかっているのだった。
「それを幹から引き抜いた者こそがだ」
「何だというのだ?」
「その持ち主となるべき者だった」
言葉は過去形であった。
「だがどんな勇者も抜けなかったが一人がそれを果たした」
「その者は誰だ?」
「それこそがジークムントだった」
言葉はここでも過去形だった。
「彼は戦いにそれを携えて行ったが剣はヴォータンの槍が砕かれた」
「砕かれたか」
「今はその欠片を一人の鍛冶屋が持っている」
自分だとはあえて言わない。
「勇敢で愚かな若者ジークフリートがだ」
「あの若者がか」
「そうだ。あの若者が竜を倒す時に」
その時だという。
「その剣だけが役に立つということを彼は知っているのだ」
「その時にか」
「そうだ、彼がだ」
あえて誰とはここでは言わなかった。
「彼はだ」
「わかった」
「これでいいのだな」
「そうだ。御前の首は保たれた」
こうミーメに告げるさすらい人だった。
「それは私が保障しよう」
「そうか」
「御前は賢い者の中でもとりわけ賢い」
彼は言った。
「御前の賢さには誰も適うまい」
「褒めても何も出ないぞ」
「貰う必要もない。そうだな」
言葉はここで皮肉なものになってきた。
「その若者を小人の為に利用しようとは。賢いものだ」
「ふん、誰のことだ」
「わかっていると思うがな。それでだ」
彼はここでまた言ってみせてきた。
「三番目の質問だ」
「最後だな」
「そうだ、最後だ」
このことは強く保障してみせた彼だった。
「それは言っておこう」
「では何だ?」
問う彼の顔はいよいよ強張ってきていた。
「その最後の問いは」
「誰が鍛えるのか」
彼がミーメに問うたのはこのことだった。
「誰がその欠片になっている剣を鍛えるのだ」
「少なくともわしではない」
彼はこれ以上になく忌々しげに答えた。
「わしではないのだ」
「御前ではないというのだな」
「そうだ、わしではない」
彼はまた言った。
「わしではとても鍛えられない。どうにもならない」
「では他の者か」
「誰なのか、それは」
彼は首を横に振った。
「しかしわしではないのは確かだ」
「曖昧な返答だな」
「では首はないというのか?」
「いや、それでいい」
しかしさすらい人はここでは大人しかった。
「その返答でいいのだ」
「その言葉嘘ではないな」
「嘘ではない」
また答える彼だった。
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