GGO編
百十七話 The End
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よるほんの少しの動揺が、彼に一瞬行動までの遅延を作る。そしてその一瞬の間に、アイリは既に再び三メートルまで距離を詰めていた。スピードに乗っているアイリを前に既に行動までの猶予は無く、ザザは即座に何らかの対応を取らなければならない。
さて、そう言った場合、人間が反射的に取ってしまう行動は決まっている。即ち、自身の体に最も染みついている行動だ。そしてザザの場合それは……SAO時代、攻略組に味あわされた屈辱を果たすために執念で身に付けた、エストックと言う武器における攻撃の動きそのものだった。
「っ!」
反射的に起こしたとは思えない素晴らしくなめらかな動きで、ザザは自身の持つ刺剣を突きこむ。完璧なタイミングだった。ノーモーションから放たれたその銀閃は、瞬時にアイリの左肩へと迫り……その瞬間、それは起こった。
「真式……改!」
突きの軌道が、アイリから“逸れた”。いや、“逸らされた”と言うべきか。
アイリの左肩にエストックの尖端が突き刺さった……その瞬間、アイリが左足を軸にして、前に進むベクトルをそのままに、体を左に前進しながら回転させたのだ。左肩に尖端をしっかりと突き刺していたエストックは、急な横のベクトルの動きに耐えられずに、そのまま進路を大きく左側にずらす。
其処はアイリの左側、アイリの身体の中心線上からは、大きく外れた位置の直線状だった。“身体で攻撃を受け流す”という、普通ならあり得ない一手。しかしそれが、今この状況に置いては、いっそ気持ち良いくらいの最上の一手となる。
そして、ザザが突きこんだエストックとすれ違うように、アイリの右側で構えられていたアイリの剣が、回転した事によってその切っ先をザザに向ける。
後は、突き込むだけの状況。
思考を読み、行動を読み、瞬間的にザザが起こすであろう行動を読み切り、アイリはこの状況を作った。
アイリの賭けが成功した瞬間……否。
“アイリ”と言う剣士の力が、完全に、“赤目のザザ”たる殺人鬼の上を行った瞬間だった。
そうして、引き絞られたアイリの剣は……その運動エネルギーの全てを、正面のボロボロのマントの中心へと、爆発させた。
「逝っ……ちゃえええええぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇぇっっっっ!!!!!!」
────
「……お、ぉ」
胸の中心に突き刺さった鋼鉄の刃を掴もうとするかのように腕を上げて、ザザは声を上げた。地の底から沸き上がるようなその唸りは、恐らくは屈辱と悔しさから来るそれ。こんな結果は認めぬとばかりに、ゆっくりと腕が持ち上がって行く。しかしそれを待たずに……。
「…………」
アイリは刃を捻り、引き抜いた。
「…………!」
まるで正面に向けて腕を伸ばそうとするかのように伸ばしながら、ザザは既に動かず、喋れないアバターの
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