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或る皇国将校の回想録
第二部まつりごとの季節
第三十九話 近衛衆兵鉄虎第五〇一大隊編成に関する諸事情について
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多分、二十歳前後だと推測するがそれすらもあやしいものだ、と益山は考える。

――あぁ、成程そう言う事か。
自分の現状の所為か、妙な同情心が湧いてきた。
 ――まったく、これだから両性具有者と云うのは度し難い。いやいや、度し難いのは馬鹿な男の性か。まったく、あの親王殿下は子供に動物を送るのと同程度の気分だったのか?
まったく、やんごとなき御方も中々どうしてえげつない。ただひたすら健気に新城直衛に仕える情人を送り付けたわけだ――彼女個人には大した意味もない、
確か親王殿下の個人副官と兄弟(しまい)だったがそれもあまり意味がないだろう。
 ――馬鹿げた話だ、下世話な話だ、だがそうした話は驚く程長く、ひょっとしたら社会と呼ばれるモノが出来たその瞬間から連綿と続いているかもしれない――そう思わせるほど有効な手法である。
 ――哀れに思った、結局はその為の種族として生かされたのだ、彼女(かれ)達は。軽く頭を振って感傷を追いやる。いやいや、そう思わせる為の美貌だ、いやいや、だが――畜生。
 結局――男にそう思わせるだけの可憐さを彼女(かれ)は持っている、おそらくは主人に向ける本能的な健気さも、また然り。そうした種族なのだ、少なくともそれは人間と違う。

「失礼いたします、大隊長殿。」
 そう言って入室する副官を仏頂面で迎える大隊長を眺めながら益山は下らない考えを弄ぶ。
 ――あの大隊長殿もどれ程この健気な生物を遠ざける事ができるのか、それもまた楽しみかな?
 底意地の悪い好奇心を胸に抱き――それを大隊長と副官に対する自分なりの決着にした。


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