10日間の小さな行軍記
行軍2日目〜後編〜
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言うと、ついにマストルは眉間に皺を寄せて言った。
「たかが亜人に財産を譲れと?」
いつの間にか丁寧さも消えてる。ただの強欲爺さんかお前は。
「お言葉ですが、たかが亜人と言いましても攻められれば壊滅の危険もございますが?」
実際は何にも知らないけど、聞く話によると狼人の方が人より強いらしいし。
「君には人間としての誇りは無いのかね?」
マストルはますます高圧的な態度で俺を睨んできているが、こっちだって命が懸かってるんだ。一歩だって引くわけにはいかない。
「取る物取って全員生きて帰れらるんだったら、是非ともそうしたいものですね」
半分ブチ切れて言うと、俺の言葉に強欲爺さんは苦虫を噛み潰した様な顔になる。
「……ふん、良いだろう。今回は諦めておくことにしましょう」
と、マストルは俺に顔を見ずにワインを煽って言った。
なんかムカつくが、とりあえず命は助かったっぽい。戦利品ごときで人間の誇りとか、ホント意味不明だし。
結局、戦利品とやらを全てダチョウの元に戻して俺達は再び行軍を始めた。
今回の件で明らかにマストルのジジイには嫌われたが、流石は人間の誇りとか言うだけあって食事の量が減るとかは無かった。
「それにしても、何で突然あの奴隷商人はデュアドの戦利品を諦めたんだろう」
夕方、夕食を終えて今日の戦闘していた分の遅れを取り戻す為に行軍を続けていると、珍しくシュナウドの方から話し掛けてきた。
「それは俺が説得したからだよ、命が助かって良かったね」
「……なんて説得したんだ?」
少し考えたが答えが出なかったのか、向こうから突っ込んで聞いてきた。シュナウドは何気に興味津々みたいだ。
「いや、狼人と喧嘩になったら勝てないんだから諦めろと」
「ふーん。それであのマスター、良く諦めたね」
シュナウドは何故かニヤニヤしている。
「え? どうゆうこと?」
ニヤニヤの意味も含めたつもりでそう聞くと、シュナウドはその表情を崩さないままで答えた。
「亜人を理由に利益を損ねる。要するに負けを認めたって事じゃないか。あの爺さんは亜人を毛嫌いしてたはずだけど」
なるほどねぇ。毎回勉強になります。
「まぁ流石の強欲爺さんも命には代えられないんじゃない?」
「……タイチ、アンタって変なヤツだな」
まぁそりゃこの世の人間じゃありませんからね。
と、口を付いて出そうになる言葉を飲み込んで、俺達はまた黙々とした行軍を続ける。
どれだけ歩いただろうか。2日目の太陽も夕日となってその役割を終え、月の薄明かりが緑を照らし始めた頃、今日の予定量を進み終えた俺たちは各々がまどろみの世界に身を投
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