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形而下の神々
10日間の小さな行軍記
行軍2日目〜後編〜
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は襲われただけじゃないか」

 しいて言えば正当防衛ってやつだろ。

「そんな理屈が狼人に通用するかな? 奴ら亜人だぜ? 俺達人間の理屈は通じない、奴らには奴らの理屈があるんだ」

 郷に入らば郷に従えというやつか。

「そりゃあ厄介だね。でも亜人って弱いんでしょ?」

 拙い知識だが、今朝亜人は弱いと聞いたばかりだ。が、傭兵さんはありえないと言った顔つきで首をガンガン振った。

「はぁっ!? そんな訳無いじゃんか!! 亜人は人間より遥かに強いよ!!」

えっ、そんなの聞いてないし!!

「で、でも現に人間の方が他の亜人より優位なんでしょ?」

「それは人と亜人で戦争したら人が勝つよってコトで、戦争と戦闘は違うでしょ」

 そういう事かよ……。要するに人間は数で亜人を圧倒してるから勝てちゃう訳ね。
 いくら公式が有っても、亜人と人とが一対一で決闘したら勝てないと。

 なるほどね〜。ハイ納得しました。


「って呑気に戦利品集めてる場合じゃねぇ!! 早くここ抜けないと!!」

 俺が慌てて言うと、更にとんでもない事実が彼の口から伝えられた。

「いやいや、ここ抜けるのにあと7日はかかるよ?」
「なんですとっ!?」


 どうすりゃ良いってんだよぉ……。このまま戦闘になれば、それこそ全滅もありえなくない?

「マストルさんがあの鳥から戦利品を盗らなきゃ助かったかもな。じゃ、俺は死にたくないんでさらば!!」


 とか言って運んでた戦利品を俺に押し付け、謎の傭兵は去って行った。


 ……仕事放棄しやがった。

「なんちゅーヤツだあいつは……」


 きっとアイツはこのまま引き返してイベルダで別の依頼でも受けるのだろう。

 そういう仕事の態度は全く気に食わないが、あの傭兵が居なかったら危うく俺達は狼人とやらに襲われて壊滅するところだった。
 要するに正当防衛であって狩りではないという所を狼人に分からせれば良いんだよな。ならば生き残る為に俺がやるべきことはただ一つ!

 早速、強欲ジジイに物申してみよう。





「マスター、お話があります」

 言いながらマストルのテントを開けると、ジジイはまたワインを煽っていた。

「あぁ、傭兵の特攻君ですね。何です?」

 話し方こそ丁寧だがコイツ、なんて偉そうな物言いなんだろうか。
 なんか腹立たしいので、もうストレートに言ってしまおう。

「今回討伐した魔物の戦利品、諦めて欲しいんですが」
「何故?」

 マストルはワインのグラスを置いて、不機嫌そうにこちらを睨む。

「この辺りは狼人の縄張りです。そこで我々が狩りを行ったと見なされてしまえば、余計な争いを招きかねません」

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