第五十九話
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「させるか!」
俺が投げつけた槍は長衣の袖を貫くと本陣を囲んでいる木板に突き刺さり、奴と壁を縫い付けた。
アルヴィスのことなど目もくれず、大剣を引き抜きマンフロイへと突進した。
……マンフロイが歩んできた人生は苦しみの連続であったろうことは理解できる。
ロプト教団の生き残りに生まれついてしまえば幼いころからロプトウスが全てという洗脳教育を施され、一般の社会というものを知ったとしても、それは唾棄すべき汚れたものとしか映らないであろうし。
そのようにロプト教徒を駆り立てるのは、彼らがかつて他者に行ってきた弾圧と迫害を、立場を逆として自らが受けているということを省みることが無いからだ。
ロプト教団を狩りたてている十二聖戦士の末裔も、自らが弾圧と迫害を行っているという自覚が無いだけに、今や同罪とも言えなくは無いのだが………
だからといって奴の望みを叶えていい道理は無い。
それは彼らが言うところの唯一神ロプトウス、それの前に等しく全てが犠牲となる社会の構築だからだ。
その企ては過程に於いてもその結果としても、望まぬ死を強いられる人々の数は数え切れず、最終的にはこの大陸全ての命を消し去るということゆえに……
「ヴェルトマー公とお見受けした。 降伏するならば良し、さにあらずば御首頂戴いたそう」
「……」
背後ではアルヴィス……魔将と呼ばれていた……と、イザーク父子が戦いを始めていた。
だが……
「……汝、ソの隣人ヲ敵とセヨ、ばサーく」
「………」
「む……父上! 私がわからぬか! ……敵は私ではありません! あの赤毛の者ですぞ!」
どうやら賢者であるアルヴィスは二対一の不利を覆すために杖の力を使ったようだ。
こうなっては逆にマリクル王子が二対一の危機に追い込まれた。
早くマンフロイを片付け、援護に入らねば!
袖を破り捨て、地面に転がった杖を拾おうかというそぶりを一瞬見せたものの、懐から魔道書を取り出したマンフロイは俺に魔力を叩き付けた。
……火傷とは違う、だが焼け爛れるような痛みが俺を襲うが歯を喰いしばり、一足跳びに間合いを詰めると馬上槍のように切っ先を奴に向け突撃をかます。
詠唱を終え、魔力を放った後の隙だらけのはずが寸での所で避けられた。
それに臆せず、そのまま力の限り横に薙ぎ払うと奴の左腕は斬り飛ばされ、さらには脇腹にも深く食い込み、絶叫が響いた。
……だが、トドメの一撃を加えようとしたその刹那、切り落とされたマンフロイの腕はまるで意思のあるかのようにその傷口にまで引き寄せられ、一瞬にして接合されると、次いで脇腹の傷も瞬
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