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真・恋姫無双 矛盾の真実 最強の矛と無敵の盾
黄巾の章
第12話 「それが『正義』ってやつだろ?」
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  ―― 馬元義 side 洛陽近郊 山間部 ――




「ゆくぞ!」

 私が抜き放った横薙ぎの一閃。
 その刃を、身体を後ろに下げることで避けた郷循――北郷は、くるりと身体を反転させるとそのまま回し蹴りを放ってくる。
 その蹴りを屈むことでかわしつつ、下から剣を跳ね上げた。

「ふっ!」

 北郷は、その剣の腹に右の掌底を当てて弾き飛ばす。

「なんだと!?」

 弾かれた剣を取り落とさないように握った手をぎゅっと固める。
 手にはその衝撃による痺れがじんわりと襲ってきていた。

「剣の腹を叩いただと、ばかな……」
「振りが遅いですよ。当てる気のない蹴りとわかっていたなら寧ろ突くべきでしたね」

 北郷はそう言って態勢を整える。
 その姿に隙がない。

「その程度ですか?」
「ふ、ふざけるな!」

 私は斬り下ろし、薙ぎ、斬り上げる。
 私にとっては渾身の三段攻撃だった。
 だが……

「遅い。組み立てが悪い、姿勢も悪い」

 北郷は難なく避けた後、そう言ってくる。

「せめて二段にするべきですね。斬りあげての斬り下ろし。もしくは斬り下ろしてからの突き。地に足がついていないのでふらついているから命中率も悪い」
「くっ……」
「そこらの雑兵ならばともかく、武将相手ではまったく敵いませんよ? そんなものですか?」
「な、舐めるな!」

 私が激昂(げきこう)して剣を振り回す。
 北郷は、やれやれとした顔でなんなくその剣を避けてゆく。

「剣がふらついています。もっとしっかり持って」
「くっ!」
「腰を落として重心を低く。剣に身体を持っていかれていますよ」
「ぐっ……」
「突くなら剣先をぶれない様に前足に重心をしっかり乗せる。腰が引けているから横にずれています」
「っ……」
「足元疎かにしない。左側が隙だからけです。半身は常に気にしてください」
「…………」

 う、うう……

「どうしました?」

 四半刻(三十分)もしないうちに、私は剣を取り落とした。
 勝てない……
 この若者には絶対に勝てない。
 実力が違いすぎる……

「貴方は武人のはずです。その貴方がここで剣を取り落とすのですか? 貴方の武人の誇りはどうしました?」
「ぐっ……」
「敵わぬ敵とわかっていたはずです。返り討ちにあうだろうとも感じていたはずです。それでも私に剣を向けた。なのに今ここで剣を落としてどうするのですか」

 そうだ……
 わかっていた。
 彼が構えたときに、私では絶対に勝てないと。
 それでも……それでも私は。

「武人として、貴方の果し合いを受けたのです。最後まで貴方の責務を全うして下さい」
「……忝い」


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