第二幕その十
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だ、私はここだ」
こう大声で告げるのだった。
「ここにいるぞ」
「あの声は」
ここで起き上がったジークリンデだった。声を聞いて。
「まさか遂に」
「そこか!」
フンディングも姿を現した。出て来たのは彼一人だった。
「そこにいたのか恥知らずな男よ」
「私が恥知らずだというのか」
「そうだ」
右手の槍で彼を指し示しての言葉だった。
「よくも逃げてくれたものだ」
「私はもう逃げることはしない」
ジークムントは剣を前に出して言うのだった。
「貴様からはな」
「では来るのだ」
フンディングも引こうとはしなかった。
「わしも一人だ。これで不満はないだろう」
「如何にも」
ジークムントもまた彼と対して告げた。
「あのトネリコの木から抜き取った剣で貴様を倒す」
「何っ、あの木からか!?」
「そうだ、あの木からだ」
彼は言うのであった。
「その剣で今貴様を倒そう」
「くっ・・・・・・」
「そうです、ジークムントよ」
ブリュンヒルテがここで姿を現して彼に告げた。
「今こそ勝利を!」
「ならぬ!」
しかしだった。ここで嵐そのものの声が響いた。
「この槍を恐れよ!剣よ砕けよ!」
こう叫び彼が槍を一閃するとだった。それだけでジークムントが持つ剣は砕けてしまったのだった。
「なっ、剣が・・・・・・」
「今だ!」
フンディングはその機会を逃さなかった。槍を突き出したのだ。
「うぐうっ・・・・・・」
槍はジークムントの胸を貫いた。彼は槍が抜き取られるとその胸から鮮血を噴出しながら背中からゆっくりと倒れていく。そしてその中で呟くのだった。
「ジークリンデ・・・・・・」
「いけない!」
ジークムントが事切れたのを見て。ブリュンヒルテはすぐに呆然としているジークリンデを抱きかかえて連れて行くのであった。
「貴女はこっちに!」
「貴女は!?」
「話は後で!」
今はそれを言う余裕はなかった。素早く彼女を連れて父の前から立ち去ったのだった。
「おのれ、逃げ去ったか」
ヴォータンはその彼女が逃げ去った方を見て忌々しげに呟いた。そして次にその顔のままでフンディングを見やる。そのうえで宣告したのだった。
「行け、奴隷よ!」
呆然とする彼に告げた。
「フリッカの下にな。ヴォータンは務めを果たしたとな!」
右手に持つその槍を突きつけるともうそれだけで倒れてしまい動けなくなったフンディングだった。ヴォータンは彼の亡骸に一瞥もせずさらに忌々しげに呟いた。
「ブリュンヒルテ。許すことはできない、主神に逆らったことは・・・・・・!」
こう呟きすぐにブリュンヒルテが逃げ去った方に向かった。その動きは憤怒そのものだった。
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