ゆり
一本目
[2/3]
[1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
れど、ゆりだけはじっと考え込むように押し黙っていた。
「あなたにはあああああ、思い当たることがあるはずですよおおおおおおおお」
老婆はぐいと身を乗り出すと、カッと目を見開いた。
「ゆりちゃん…」
怖くなったのか、山下がゆりの腕をつんと引っ張った。
しかしゆりは、はっきりとした口調でいった。
「ねぇ。ちょっとみんな先に帰ってて」
「ゆりちゃん!」
山下が非難するようにゆりの名を呼んだ。
「いいから」
「ゆりちゃん、何言ってるの?絶対絶対、200パーセント怪しいよ!気にしないで帰ろうよー明日早いし、ね?」
「大丈夫、きっと。あのおばぁさん絶対に私より力ないからどうにかなるわけないし」
「…そうかも、だけど・・・。わかった!心配だからあたしも一緒にいる!それならいいでしょ?」
ゆりは山下の申し出をありがたく受けた。どのみち、目の前の老婆一人なら女二人でも危ないことにはなろう筈もない。
「じゃあ僕も残ろうかな。やっぱり、こんな夜に女の子二人は残しておけないしね」
にこにこと笑いながら、唐突に青山が言った。
ゆりにとっては願ってもいない申し出だった。
「ねぇ、おばぁさん」
大学のみんなを見送ってから、ゆりは老婆に神妙に声をかけた。老婆の言葉を戯言と流せない心当たりが、ゆりにはあった。
「いけないもの、って、なに」
「あれをおおおおお」
老婆はさっとゆりの背後を指さした。三人は振り返るが、電柱がある以外はこれといったものもない。
「…電柱?」
「見えないのですかあああ感じないのですかああああいけない、いけませんぞおおおおあそこから、じっとこっちをみているものが、いるではないですかああああ憑かれているあなたには、少なからずわかるでしょうううううう」
老婆はゆりの鼻先に指を突きつけた。ゆりは、背筋が寒くなった。
もう一回、振り返る。
新宿は夜でも明るい。色とりどりのネオンが煌々と夜の町を照らす。そのなかでも、確かに、老婆が指さした電柱のあたりは薄暗く、じっと見ていると、嫌な感じがお腹の底からじわじわとあがってくるようだった。
あそこに立って、ゆりをじっと見ているものが、いるのだ。
「わたし、どうなるの…」
その言葉はゆりが思っているより弱々しく響いた。
「死ぬ」
老婆はにいぃと笑った。いびつに並んだ黄色い歯
[1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ