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亡命編 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第七十八話 ゼーアドラー(海鷲)
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フェルトが不得要領に頷いた。その有様にまた笑いが起きた。

「ミュラー准将、卿はヴァレンシュタインとは士官学校で親しかったと聞いている。卿から見てヴァレンシュタインとはどんな男かな」
話題を変えた方が良いだろう。こういう時は皆が関心のある話題が一番だ。俺自身彼の事を知りたい。だがミュラー准将にとっては答え辛い質問だったようだ、表情に困惑を浮かべた。

「エーリッヒ、いえヴァレンシュタイン……」
「エーリッヒで良いさ、俺達に気を遣うことは無いぞ、ミュラー准将」
ビッテンフェルトが言い直そうとしたミュラーに声をかけた。皆も頷く。気が楽になったのだろう、ミュラーは一口ウィスキーを飲むと話し始めた。

「エーリッヒは人間として信頼できる男です。軍人としては戦術よりも戦略を、補給を重視していました」
ミュラーの答えに皆の様子を窺った。皆が顔を見合わせている。だがクレメンツ副参謀長だけは身じろぎもせずにグラスを口にしていた。

「卿とはどうだ、その、シミュレーションは」
ビッテンフェルトが少し躊躇いがちに問いかけた。ミュラーの面子を慮ったのかもしれない。ミュラーもそう思ったのだろう、微かに苦笑を浮かべた。

「小官よりもずっと上ですよ、ビッテンフェルト少将。士官学校時代、小官は殆ど勝てませんでした」
その言葉に皆がクレメンツ副参謀長に視線を向けた。士官学校時代の教官に確認を取ろうと言うのだろう。副参謀長が苦笑を浮かべて頷いた。

ミュラーよりも上か……、やれやれだな。俺が彼と対戦してほぼ互角だ。もちろん実戦とシミュレーションは違う、しかし軽視できる話ではない。
「ミュラー准将よりも上か。どうやら運だけでは生き残れそうにないな、ロイエンタール」

肩を竦めたミッターマイヤーの言葉にロイエンタールが苦笑を浮かべた。
「全くだ。皆、遺書と墓碑銘の用意をした方が良さそうだな」
ロイエンタールの言葉に皆が苦笑した。ビッテンフェルトは口の中でぶつぶつ呟いている。“他人を誉めるときは大声で、悪口を言うときはもっと大声で、いかんな”と声が聞こえた。

こいつ本気で墓碑銘を考えるつもりか? 俺の同期は碌なのが居ない、女たらしで皮肉屋のロイエンタールと猪突猛進で単純なビッテンフェルト……。まともなのは俺だけだ。ミュラーも同期の事では苦労している、何となく彼に親近感を感じた。彼に視線を向けるとミュラーは困ったような顔をしている。何か言いかけて口を閉じた。

「どうした、ミュラー准将。なにか言いたそうだが」
「……」
俺が声をかけてもミュラーは黙っている。彼はこの中で唯一人階級が准将だ、遠慮が有るのだろう。

「遠慮はいらん、言ってくれ」
「ワーレン少将の言うとおりだ、俺達は仲間なのだからな、遠慮はいらんぞ」
ビッテンフェルトが
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