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亡命編 銀河英雄伝説〜新たなる潮流(エーリッヒ・ヴァレンシュタイン伝)
第七十七話 情報部の憂鬱
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そしてどこか疲れた様な色だけが残っている。
「これまでは情報部からシトレ元帥に情報を上げるのがメインだった。だが今はシトレ元帥からオーダーが来る。おまけに俺達が知らない事を元帥の方が知っていてそれに対して調べろと来るんだからな……」
「……」
「ブロンズ中将も立場が無いさ。でも俺達に当たられても……」
「ミューゼル中将の件か」
俺が尋ねるとザックスは“まあそれも有る”と曖昧に頷いた。
ヴァンフリート星域の会戦前、ヴァレンシュタイン中将は遠征に参加する帝国軍将官の情報を要求してきた。情報部は当然ではあるが将官達に対して評価も付与してヴァレンシュタイン中将に渡した。その際、ミューゼル中将に対する評価はグリューネワルト伯爵夫人の弟、それだけだった。つまり姉の七光りで将官になっている、そう判断したわけだ。
会戦後、ヴァレンシュタイン中将が彼を天才だと評しているのを知った情報部は改めてミューゼル中将に対する調査を行った。そして分かった事は彼が幼年学校を首席で卒業している事、任官後は常に前線に出ている事だった。情報部の彼に対する評価はかなり出来るに変わった。つまり当初の評価は誤りだったと認めたのだ。
だがその評価も甘かった。第六次イゼルローン要塞攻防戦で同盟軍のフォーク中佐が立てた作戦を見破ったのはヴァレンシュタイン中将の予想通りミューゼル中将だった。帝国軍が彼を十二分に活用しなかったから同盟軍の損害は軽微なもので済んだがそうでなければ同盟軍は大敗北を喫していたかもしれない。
第六次イゼルローン要塞攻防戦後、情報部はその点について非難を浴びた。ヴァレンシュタイン中将がミューゼル中将を天才と評していたにもかかわらず情報部はそれを軽視した。情報部がその脅威を正しく認識しロボス元帥に警告していればもっと違った結果になったのではないか……。
いささか酷な批判だ。ヴァンフリート星域の会戦後ではミューゼル中将の天才を証明するものはヴァレンシュタイン中将の評価を除けば何もなかった。彼の天才が証明されたのは第六次イゼルローン要塞攻防戦が終わってからだ。ヴァンフリート星域の会戦後ではかなりできると評するのが精一杯だっただろう。
軍法会議でも一度論争になったが情報部に責任は無いと判断されそれ以上論争にはならなかった。だが責任が無い事と面目を保つことはイコールではない。情報部に対する周囲の目は決して温かくはない……。
「正直きついよな。ミューゼル中将の件も有るがクロプシュトック侯の一件も俺達には何の情報も無かった。シトレ元帥からヴァレンシュタイン中将の推論を聞き、それを後追いで確認したよ。まあ中将の考え通りだったけどな」
「……」
ザックスが溜息を吐いた。そして俺の顔を窺うように見ながら話しだす。
「クロプシュトック侯が失
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