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人狼と雷狼竜
誓いの言葉
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ものじゃ。……あ奴は取りに来なかったがのう」
 老人は目を細めて遠くを見て呟くように言う。
「お主に使って欲しい。これの持ち主の代わりに、お主には皆と共に帰ってきて貰いたいんじゃ」
 老人の言葉に神無達三姉妹は息を呑み、ヴォルフは黙って老人の目を見ていた。
「分かった。ありがたく使わせて貰う。そして誓おう」
 ヴォルフは一度言葉を切ると後ろを振り向いた。
 そこには神無、夏空、小冬がいた。彼女達の姿を目に焼き付けてから老人に向き直る。
「必ず戻る。彼女達だけじゃない。梓と椿、正太郎もだ」
 ヴォルフの言葉に夏空達は嬉しそうな、感激したような花が咲いたような笑顔を浮かべ、老人は満足そうに目を細めると桐箱に収められた苦無を用意していた鞘に収めてヴォルフに渡した。
 苦無はそれぞれが黒い革製の鞘に収められ、同じ革の帯で繋がっていた。
「頼むぞ。皆を」
「無論だ」
 ヴォルフはそう言ってから苦無を受け取った。既に用意されていた三本を連ねる鞘にベルトを通したものをすぐに身に付ける。場所は腰で、右手で抜くには丁度良い位置だ。
「行こうか」
「うん!」
「はい!」
「ええ」
 ヴォルフの言葉に三人は頷くと、共に訓練所の方へと向かった。
 今日手にしたばかりの武器装備をいきなり実戦で使うわけにはいかないからだ。本来ならば訓練はお休みの日だったが、今日は別だ。明日に休めば良い。





 訓練所には自主訓練なのか、正太郎達三人が既に集まっていた。
 梓と椿は神無達三人の新装備に花を咲かせ、正太郎は以前と同じ鎧に身を包み、新たな武器を手にしていた。
 ただ、それはヴォルフが予想していた(ランス)ではなく、討伐隊正式銃槍と呼ばれる銃槍(ガンランス)だったが。
「……お前、何故ソレを?」
「おお! 良いだろコレ! カッコイイよな!」
 ヴォルフの指摘に嬉しそうに言う正太郎だが、ヴォルフ自身は胡乱気な目を向けていた。
「そいつは槍と違って扱いが難しいぞ」
 ヴォルフはガンランスの欠点を挙げていった。
 弾が尽きれば戦力が下がる。
 切り札である竜撃砲は一度きりで替えが利かない。
 一本の鉄塊である槍と違って、ガンランスは多くの部品から作られた精密機械に近く、荒っぽい扱いに向いていない。理由は簡単。壊れ易いから。
「それでも俺はこいつを使いたいんだ! 俺は俺のやり方を貫きたい!」
「……そこまで言うなら勝手にしろ。ただし、訓練は今まで以上に厳しくする」
 普通なら見捨てても良いかも知れなかったが、ヴォルフはそんな選択肢は浮かばずに面倒を見る事にする。あの老人との誓いを破る訳にはいかないし、最初から破る気は無い。
「おうよ!」
「皆! 大変だよ!」
 正太郎が気合の入った返事をすると、受付嬢の木葉
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