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人狼と雷狼竜
誓いの言葉
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った。
「そうだ。飲まないか?」
 話題を切り替えようと思ったのか、正太郎はお盆に載った小瓶とお猪口を見せる。
「ん? 何だそれは?」
「酒だよ。飲んだ事無いのか?」
 ヴォルフの言葉に正太郎は不思議そうな顔をするが、酒をお猪口に注いでヴォルフに渡す。
「……」
 ヴォルフは受け取ったお猪口の中身である透明な液体を見る。一見水だが、何処か独特の刺激を持つ香りがした。
 正太郎を見ると、彼は別で用意していたのか二つセットで持って来ていたのか、お猪口に酒を注いで飲んでいた。
「ふぃ〜っ!」
 目を強く閉じて、しかし美味くて堪らない! とでも言うような仕草をする。
 そんな様子を見たヴォルフはお猪口の中身を一気に飲み干そうとし……盛大に咳き込んだ。
「ゲホッ! ガハッ! ゴフォッ!」
 口の中が、喉が、焼け付くように熱い!
 そのただならぬ様子に正太郎は呆然とヴォルフを見ていた。
「……何だコレは? よくこんな物が飲めるな?」
「あ〜……」
 正太郎は気拙そうに視線を逸らした。まさかヴォルフが酒を飲んだ事の無い人間だとは思いもしなかった。
「ま、飲んでるうちに慣れるよ。ダメな奴はてんでダメだが」
「そうなのか?」
 正太郎は自分がヴォルフに何かを教えられるなんて珍しいと思いながらも説明する。
「酒が絶対に飲めないって人間もいるんだよ。体が一切受け付けないってのか? まさにそんな感じ。確か夏空さんがダメだったな」
 正太郎の言葉を聞きつつも、ヴォルフはコレを二度と飲もうとは思わなかった。
(そう言えば、ポッケ地方の集会場ではこの類を飲んで騒いでいた奴らが大勢いたな)
 過去に行った事のある雪山の小さな村で起こした騒動を思い出す。
 余りに五月蝿かったのでヴォルフが「五月蝿い」と一言文句を言ったら、酔った男達は立ち上がってヴォルフに絡んできた。
 結果は言うまでも無い。幸いにして酒場が血風呂にならずに済んだ事くらいだ。
 その一件から数日後にはポッケ村を出た訳だが、今の今までそんな事はすっかり忘れていた。
「そろそろ上がるか……」
「おう……ってオイ!」
 ヴォルフが立つと、正太郎が血相を抱えて呼び止めた。
「何だ?」
「何だじゃねえよ! お前、その傷跡は……」
 正太郎の視界には、細身ながらも過不足なく戦闘用に鍛えられた見事な……しかし、無数の傷跡が刻まれたヴォルフの体が映っていた。
 切り傷。擦り傷。抉られたような傷。火傷。他にも幾重もの傷が重なって変色すらしている箇所もあった。
「これは未熟だった事の証だ。未熟だったから手傷を負い、死の淵を彷徨った覚えもある」
 正太郎はヴォルフの言葉の後に自分の体を見下ろした。傷らしい傷など何処にも無い。
「そっか。やっぱ、お前って凄ぇわ」
「何がだ?
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