暁 〜小説投稿サイト〜
形而下の神々
10日間の小さな行軍記
行軍2日目〜前編〜
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た死の嘴が頭上を覆う。が、その瞬間俺は念じた。

「公式展開!!」

 ガコッ!!と地面を粉砕する嘴。俺は瞬間移動でヤツの眼球の真横に居た。瞬間移動は、血が付いた点を中心に円上を移動する公式だ。もちろん背後にだって回れるが、ここは敵が魔物だという事に配慮して先に視界を奪う事にした。
 俺の身体は空中だが、地面に嘴が刺さってヤツが困惑している今ならまだ攻撃が間に合う。

「死ねゴルァー!!」

 そう叫び、短剣は届かないので鉄パイプを眼球に思いっ切り突き立てた。
 ズブッ、と言うよりはプリュッって感じ。鉄パイプは一瞬でヤツの眼球に埋まる。

 グイグイ埋まる。ジャンジャン埋まる。そして、かけた力以上に鉄パイプはダチョウの巨大な目玉に深く突き刺さった頃、俺はやっぱり何か変だなと思った。


 そして、これはいよいよおかしいなと感じたのは、手首に痛みを感じ始めた辺りだった。

 そう、おかしいのだ。いくら何でも鉄パイプが埋まる勢いが早すぎる。いくらなんでも俺、そんなに強くないし。そもそもなんか手首まで眼球に刺さって気持ち悪いし腕は痛いし……。


 要するに、俺が眼球を突き刺したんじゃない。眼球が向こうから近付いて来たんだね。


「ぶベっ!!」

 ダチョウの頭突き。まさか眼球を犠牲にして頭突きして来るとか。

 予想外デース。

 しかも気付けば目の前には殺意満々の嘴。

 また必死で唱える瞬間移動。

 今度の中心はダチョウの頭じゃなくてさっき投げた石ころを中心にして、出来るだけダチョウ野郎から離れる様に移動する。

 実際、石ころの場所なんて知らないが、ダチョウから出来るだけ遠くへ……。


 ドサッ、と背中に激しい衝撃を受けて地面に倒れる。

 石ころはそんなに遠くには行ってなかったみたいで、真横にダチョウの爪があった。

 こえぇっ!!
 しかも爪の間に見覚えの有る傭兵さんの顔がぁ!!
 ギャー!! 生首とか……吐く吐く!!


「ひいぃ〜!! 死ぬ〜〜!!」

 鉄パイプなんてとっくにダチョウの目玉の一部として寄付していたが、大事なマンゴーシュだけしまって一瞬で起き上がりダチョウに背を向けると、俺は過去最高速度でグランシェの元へ走った。

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