第一部
第二章 〜幽州戦記〜
二十五 〜張三姉妹〜
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論、あるわ」
「では、それを名乗るしかないでしょうねー。偽名では、不自然さが出て露見してしまう恐れがありますから」
そうだな。
少なくとも、張梁以外に芝居を演じる素養はなさそうだ。
万が一、露見したが最後、間違いなく始末されるだろうな。
「うむ。私も、それが良いと思うが」
真名は神聖なもの故、抵抗もあるだろうが。
「いいわ」
「ちぃも、別にそれでいい
「なら、お姉ちゃんも」
……随分と、あっさりと認めたようだが。
「いいのか?」
「ええ。だって、もともと公演の時も、私の事は真名で呼んで貰っていたし」
「そうそう。その方が、ノリノリになれたしね」
「そうだね。そう考えたら、別に問題ないもんね」
……頭痛がしてきた。
「ならば、この書は焼き捨てる。良いな?」
「ええ。仕方ないもの、残念だけど」
「……でも、これでちぃ達、また一からやり直し?」
「せっかく、応援してくれる人も一杯いたのになぁ」
「……姉さん達の事は気にしないでいいわ。残っていれば未練があるでしょうけど」
「わかった」
天幕を出て、篝火の中に書を放り込んだ。
メラメラと、天下を騒がせた根源が、灰燼に化していく。
……文字通り、これにて一件落着、といけば良いのだが。
数刻後。
広宗の賊徒制圧もほぼ完了し、他の軍も後始末に入ったようだ。
我が軍も、各々が走り回り、任についている。
今は、稟と愛紗だけが、この場に残っていた。
「では、張三姉妹についてはそのように」
「念のため、警護の兵を手配りしておきます」
「うむ」
懸念事項も片付き、ようやく一息付けそうだ。
「ところで、ご主人様。この後、お時間はございますか?」
「愛紗。何かあるのか?」
「はい。疾風を、見舞っていただけないかと」
「疾風を?」
稟も、頷く。
「ご存じの通り、此度はかなり疲れたと見えて、未だに臥せっています」
「……うむ」
確かに、気にはなっていた。
能力のあまりに、頼り過ぎてしまったのは事実だ。
「そうだな。そうしよう」
「……それから、一つ、お願いがございます」
心なしか、愛紗の顔が赤いようだが……。
いや、稟も同様だな。
……むしろ、鼻を押さえているのはどういう訳だ?
「……疾風の想いに、応えて差し上げて下さいませ」
「…………」
「既にお気づきでしょうが、疾風もご主人様をお慕いしております」
「不器用な者ですから、口には出しませんが。それと、私達への遠慮もあるのでしょう」
やはり、か。
そんな素振りは見せていたが、私から指摘するのは憚られた。
私を慕ってくれている稟や愛紗達への遠慮、それに疾風本人の意思を見定めたかった事。
……だが、皆も気づいていたのか。
ふふ、
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