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至誠一貫
第一部
第二章 〜幽州戦記〜
二十五 〜張三姉妹〜
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 真実がどうあれ、首謀者がお咎めなしで済まされる程、甘くはあるまい。
 ましてや、大陸全土を巻き込んだ戦乱に発展、勅令による討伐となったのだ。
 ……だが、当人達にそこまでの覚悟があるとは見えない。
「やっぱり、処刑されちゃうの……?」
「や、止めてよお姉ちゃん! ちょっとアンタ、ちぃ達をどうする気よ!」
「待って。あなた、私達をどうするつもりなのか、聞かせて。有無を言わせず、というようには見えないわ」
「……そうだ。勿論、お前達次第だが」
「ま、まさかちぃ達に何かするつもり?」
 思わず身構える張宝に、思わず苦笑する。
「安心するのですよ。お兄さんは、そういう方ではありませんからー」
「ですが、ただ見逃す……とは参りますまい。ご主人様、ご存念がおありですか?」
「うむ。……まず、その書はこの場で焼き捨てよ」
「ええーっ! い、嫌だよ……」
 涙ぐむ張角。
「ならば、その書にすがり、再び官吏に追われる身となりたいのか?」
「うう……それも嫌だけど……」
「それに、今のお前達は、妖術の類に力を借りているだけ。芸を極め、真の実力で勝ち取るという気概はないのか?」
「アンタね! 簡単に言うけど、ちぃ達がどれだけ苦労したと思ってるの?」
「苦労せずに大成する人間などおらぬ。仮にいたとしても、それは真の成功者ではない」
「……あの書を諦めれば、私達を助ける、とでも?」
「事情を知らなければ、頚を刎ねるまでだったが。この争乱を、お前達が望んでいたものではない……そう知った以上は、そうもいくまい」
 華琳に聞かれたら、恐らくは甘過ぎる、と言われる事だろうな。
 だが、死ぬ必要のない人間を、むざむざ殺す事もあるまい。
 私の言葉に、張梁が頷いた。
「わかったわ。姉さん達、どうするの?」
「人和。アンタ、コイツの言う事を信じるって言うの?」
「少なくとも、嘘をついてはいないわ。だって、私達を庇い立てしても、この人には何の得にもならないのよ?」
「れんほーちゃん、お姉ちゃん、まだ死にたくないよぉ……」
「ちぃだって……うう……」
「無念だろうが、こんなものは世に存在すべきではない。邪な者が手にすれば、世の人全てが苦しむ事だってあり得る。権力者が耳にすれば、お前達を殺してでも奪おうとするだろう。そうなれば、永遠に安息は得られなくなるのだぞ?」
「……だから、焼き捨てるしかない……そういう事ね」
 張梁は淡々と言った。
「まず、と言ったわね? まだ何か必要なようだけど、何かしら?」
「名は捨てよ。父母から頂いた名、辛かろうが」
「……そうね」
「でも、ちぃ達、それならどうすればいいの?」
 偽名を名乗らせても良いが……。
「風。どうすれば良い?」
「そうですねー。皆さん、真名はお持ちですよね?」
「勿
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