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或る皇国将校の回想録
第一部北領戦役
第四話 暗闇に響く咆哮
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援する。
 ――軽臼砲には、赤色燭燐弾の打ち上げ用意を」
「了解であります。中隊長殿。」
 ――後は大隊長の判断次第だ。


同日 午前第三刻半 伏撃予定地点
第十一大隊 第二中隊 中隊長 新城直衛中尉


 接眼鏡を下ろすと新城直衛は命令を下した。
「中隊膝射姿勢、擲射砲分隊は敵中央に砲撃用意、復唱の必要は無し」
 声が震えないように注意している、自分の銃に装填をする手が震えていた事はもはや当然のものとして受け止めている。
 ――全てがまずい方向にうごいている、敵は最低でも旅団、いかに伏撃野襲でも大隊規模では幾ら何でも役者不足だ。
 そう、前衛をやりすごすという計画は――崩壊した。
 だが撤退は不可能だ。まさか青色燭燐弾を打ち上げるわけにはいかないだろう、撤退しても増援の当てはない以上は正面からの殴り合いしかないからだ。
 ――攻撃しかない。だが、合図がこない、独断で撃つか?
そうすれば大隊主力も呼応せざるをえない、僕が見捨てた若菜の様に――若菜と同じ?
しかし僕は正しい筈だ。
 ――いや、
 ――――だが。
 逡巡という贅沢な時間を打ち切る破裂音が聞こえた。遅れて赤光が敵を照らす。
 ――開戦の合図だ。
「撃てっ!」
 ほんの刹那、闇が閃光に駆逐され、そして再び闇に包まれた瞬間、砲声が轟いた。
豊久の中隊が合わせたのだろう、敵が動揺している。
そして、軽臼砲から燭燐弾が次々と打ち上げられ敵を照らす。
思わず渇いた笑いが出た。
照らし出された自分の中隊の担当は千近く、大隊主力が担当するのは更に多いだろう。
 つまり敵は〈帝国〉陸軍は真室大橋を奪うために旅団規模を割り振ったのだ。
「中隊長殿?」
 猪口が声をかける。
 ――あぁ射撃を途切れさせてはならないな。
新城は笑みを浮かべ、突撃の下ごしらえを命ずる
「総員、撃てぇ!」
 今度は、後方の一里に位置する擲射砲も火を吹く、中央の騎兵集団――将校達の一部を霰弾が挽肉へと変事させた。

「よし剣虎兵、及び尖兵、総員着剣」
 かくして猛獣たちは戦場へと躍り出ていった。


同日 同刻 交戦地域 後方
第十一大隊集成中隊 中隊長 馬堂豊久大尉



 第一・第三中隊が突撃を開始すると集成中隊は事前の計画の通りに退路確保の為に移動を開始した。
包囲だけは何としても避けなくては文字通り全滅してしまう。
「騎兵砲小隊は両隊とも移動開始が可能です。」
 大隊騎兵砲小隊長の報告を聞き、馬堂大尉は鋭剣を引き抜く。
「よし、鋭兵小隊は装填用意、側道を突っ切り第二中隊の代替主力との合流を支援する。
敵の数が予想以上に多い、第二中隊を主力部隊と合流する前に消耗させるわけにはいかない。
こうも数が多いと撃滅は不可能だ、頭を潰して離脱
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