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くらいくらい電子の森に・・・(誰も死ななかった編)
第一章
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りをあらわに詰め寄ってきた、と。
――うわ、なにその状況。最悪。
「楽しみにして1時間も早く来たのに!これ逃したら次の入荷はいつだと思ってんの!!最低っ!!」
紺野氏は、自分のMOGMOGが入ったバッグを背後に手繰り寄せた。そして後ろ手にジッパーを空けながら、柚木を刺激しない程度に私物をそっと放り込む。
「あっ……あんた、彼氏でもない男を寒空に11時間も放置して全然平気なのか!!」
「バイト代払ったもん!」
「手口は聞いたぞ、あんなのは詐欺だ!」
「じゃあ何、私に11時間寒風に晒されろっていうの!?」
「えっ……?」
「私の手入れが行き届いた肌が、荒れるじゃない!!」
三人の教室が、一瞬凍てついた。すごいな、女子のこういう論理展開……。
女の子次元の話は苦手だ。何を言っても『女の子常識』というあの不可解なルールを持ち込まれて何も言えなくなる。…紺野氏を横目で見る。社会人みたいだし、僕よりは女の子常識にメスを入れられるんじゃないか、と期待を込めて。言っちゃってくれ、僕には言えないあんなことやこんなことを!
「あ、あんたなぁ……」
絶句する紺野氏。……だめだ。多分この人も見た目程、女子に免疫はない。考えてみればこんな怖そうなひとに喧嘩を売る女子なんて聞いたことがない。
「何よ、なんか言いたいことがあるの!?」
「…え、えーとな……」
「さ…寒かった…すげぇ寒かった!お腹もすいた!」
我ながら情けない恨み言が、口を突いて出た。丁度いい塩梅に鼻水も垂れてきた。紺野氏がアテにならないなら、僕が時間を稼ぐしかない。どんだけ情けない手段だとしても。
「うっわ…」
これでうっすらと、本当にうっすらと抱いていた『柚木と恋愛フラグ』は、確実にへし折れたことだろう。そう思うとなんだか気が楽になってきた。
後ろを振り返ると、紺野氏が「設定開始」と表示されたノーパソをしまい始めている。あと数秒で駆け出すだろう。僕は紺野氏と目を見交わし、次の瞬間、出口に殺到した。
「あっ!こら待ちなさいっ!」
柚木が走って追いかけてきた。僕を一限前に呼んでおいて講義をさぼる気か。
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喫茶「伯剌西爾」の古びたテーブルに落ち着く。何と読むのかは知らない。目の前には今日2杯目の珈琲。馥郁とした薫りが、ふわりと立ち昇る…などと、普段使わないような言葉で褒め称えたくなる。
大人の男である僕たちの全力疾走にぴったりついてきた柚木が、当然のようにケーキセットを手馴れたようすで注文している。きっと紺野氏におごらせる気だ。社会人は珈琲が一杯500円以上する喫茶店に、一日何度もふらりと入れるものなんだろうか。賭けてもいいがこのひとは『勝ち組の大人』だ。
「……キャラ選択画面だ」
紺野氏は息を弾ませて、ノー
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