十六 杞憂
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剥いでいる横島はどこか気持ちが荒んでしまい短気になっている。今まで道化を被り続けてその度に蓄積していた鬱憤が、ようやく発散されている最中なのだ。
(……それに、文珠を無闇に使いすぎる)
暗に横島の身を心配している故、ナルトは彼が表の自分と関わるのを良しとしなかった。里人に襲われた経験もあるのにどうしてもっと警戒しないのかと、もどかしくて仕方が無い。
歯痒い思いを抑え、ナルトは指笛を吹いた。
「………瑠璃について行け。屋敷に戻るよりアパートのほうが近い」
屋敷を囲む森には侵入者防止の結界を張っているのでいくら横島でも屋敷には辿り着けない。そのため、アパートから屋敷に行くほうが確実なのだ。しかしそうとは言わず、ナルトは頭上を指差した。
ナルトの指を目で追った横島は、何時の間にか空を旋回している鳥の姿に眼を瞬かせる。
そしてはたとナルトに問い掛けた。
「……大丈夫、なんだな?ほんとに大丈夫、なんだよな?」
「ああ」
横島の問いに了承の答えを返した途端、ナルトは自ら崖から跳び降りた。
「ナルト!?」
「早く行け」
ぐんぐん崖の底へ吸い込まれていく金髪から催促され、横島はぐっと下唇を噛み締める。ナルト自らが落ちたのならきっと大丈夫なんだろうと、そんな漠然とした考えが彼の頭を過った。
もう一度崖の底を見下ろした横島は、今度こそ本当に瑠璃の後を追い駆けて行った。
横島の姿が見えなくなった時点で、自来也ははっと夢から醒めたように周囲を見渡した。
そして崖の下のほうからボウンッと立ち上った煙に目を細める。
「よりによってガマブン太を呼び出しちまうとはの…」
『なんじゃ、自来也!わしをこんなとこに呼び出しおってっ!!』
崖全体に轟くような声が自身の名を呼んだ事にふっと口許を緩ませた彼は、先ほどの横島の事も素のナルトの事も全く憶えていなかった。
頭上を飛ぶ鳥――瑠璃の姿を見失わないように追い駆けながら、横島は密かに自嘲する。
(結局、俺は何の役にも立ってねえ………)
むしろナルトの重荷になっていると、欝屈した心情で彼は街並みを歩いていた。
とりとめもなく自分を責め続けていた彼は瑠璃の鳴声ではっと我に返る。何時の間にか見覚えのある道に横島は立っていた。ここから先は自力で帰れるので、瑠璃に「もういい」と手を振る。
その手振りの意味が理解できたのか瑠璃はくるりと大きく空を旋回し、悠然と空高く舞い上がった。あっという間に姿が見えなくなったのをしばし見送った横島はアパートへ向かう。
鍵を開けようと軽くドアに手を掛けた。途端、キイ…と勝手に開いたこと
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