十六 杞憂
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三代目火影の記憶を持っている彼はナルトが演技している理由を頭では理解している。それでも目の前でナルトが崖に突き落とされ、頭に血がのぼった。身体が勝手に動いてしまったのだ。
助けようとしたのに咎められた、そういった釈然としない思いが横島の胸中を占める。
暫し横島はギリギリとナルトを睨みつけていた。けれど無表情のまま変わらないナルトの顔を見ていると次第に頭が冷えてくる。生成した文珠を体内にストックして、彼はもごもごと口を開いた。
「……っ、悪い。でも…あのおっさん、お前に死んでこいって…」
それに崖から落ちるの見たら居ても立ってもいられなくなって…、と言い訳する横島の言葉をナルトは遮った。
「修行だ。死ぬ気でやれって意味でな。それにあの男は里人ではない。忍びだ」
「…あんな、崖から落とすような…危険なのが修行なんか…」
「そうだ」
きっぱりと言い切るナルトにもはや言葉が出ない。口を噤んだ横島に、ナルトは息をついてから口を開いた。
「もういい……とにかく早く屋敷に帰れ」
「……いやさ、その…帰り道がわかんなくて…」
自来也に激昂した際には冷静さが欠けていた。その事を自覚している横島はたははと頭を掻く。ようやくいつもの調子に戻った彼に、ナルトは内心横島の不安定な精神に対し懸念を抱いた。
横島が自来也の後をつけていた事は、気絶したふりをしていたため知っていた。鳩尾に一発殴られたところで痛くも痒くもないナルトは横島がいつ自身の名を呼ぶかと冷や冷やしていた。
一瞬で作った影分身に横島の動向を密かに見守らせる。意外と自来也に突き落とされるその時まで一切ボロを出さなかったのには感心したが、自分を助けるため文珠を使おうとしたところはいただけなかった。故に一気に崖の上へ跳躍したのである。
ナルト本来の力を等分した分身体は、記憶操作という高等忍術も当然使える。そのため横島を見守らせていた影分身に、自来也の記憶から横島の存在と素の自分の記憶のみを抹消させたのだ。
今現在横島の存在を知っているのはナルトと三代目火影、それに月光ハヤテである。加えて横島の文珠は決して人の見ている前で使ってはならない。
ただでさえ今は音と砂の里が陰謀を企てている時機。彼らが文珠という万能な神器を生成できる人物に目をつけたらマズイ事になる。そのためなるべく横島の存在を隠蔽すべきだと考えたナルトは自来也から記憶を消したのだ。
それに今の横島は被っていた道化を剥がしている。いい事であるのは違いないが、それは彼の安定していた精神を乱す事に繋がるのだ。道化の横島忠夫像は彼にとって理想であり生きていくのに必要不可欠だった。
道化を被り演技する。辛いのにそれらをする事でどこか安堵を感じていたのも確かなのである。
道化をゆっくりと
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