十六 杞憂
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ゃーという表情を浮かべたが、すぐさま彼は横島を追い掛ける体勢に入ろうとした。
いくら足が速いといっても忍びにとっては大した速さではない。三忍と謳われる男ならばあっという間に埋められる距離だ。
ナルトは人柱力である。九尾の妖狐が封印されている彼を利用しようと考える者は多い。だから善人を装って良くも悪くも純真なナルトを誑かす輩が後を絶たない。
ナルトという名前を気軽に呼んだり他人じゃないと怒鳴ったりした横島を、男――自来也は胡散臭い人物だと判断した。
「易々逃がすわけにはいかないのう」
横島がそういった輩かもしれぬため、自来也はクナイをおさめて彼を追い駆けようと足を踏み出し。
「……逃がしてやってくれないか?」
直後に気配もなく背後から聞こえた声に硬直した。
「悪いな、自来也」
突然現れた人物に、自来也は急ぎ振り返ろうとする。
しかし既に遅かった。
瞬間、身体の自由が全く利かなくなった彼の口からは驚愕の色を孕んだ言葉が絞り出される。
「ナ…ル…ト…?」
いつも天真爛漫で明るい雰囲気を絶やさない少年が、つい先ほど崖から突き落とした子どもが、涼しげな顔で立っていた。
馬鹿騒ぎをするとは思えない怜悧そうな少年は正しくうずまきナルトだった。
無表情で見上げるナルトの蒼い双眸が自来也を射抜く。思わずたじろいだ自来也は、額に触れてきた彼の指先を避ける事が出来なかった。
≪崖からうずまきナルトが落ちてから、あんたは誰にも会っていない≫
その言葉を聞いた途端自来也の眼は虚ろになる。ぼんやりと虚空を見つめる彼の隣で、ナルトは横島が駆けて行った方向へ視線を向けた。
本体が横島の腕を掴んだのを見てふっと笑う。そして次の瞬間には彼の姿はなく、代わりにボウンと煙がその場に立ち上った。
走りながらも横島は文珠を生成しようと必死だった。いつ大柄な男が追い駆けてくるか若干後ろを気にしながら霊能力を拳に込める。ようやく出来た文珠に何の字を入れるべきかと混乱しつつ、横島は崖の底を見下ろした。
「くそ、ナルト無事でいろよ…っ。今助けるからな」
「その必要はない」
文珠を握っている右腕をぐっと掴まれる。ギクリと身体を強張らせた横島は、腕を掴んでいるのが助ける対象である事に目を見開いた。
「ナルト!」
「表の俺と関わるな……そう言ったはずだが?」
掴んでいた腕を放した彼は若干の呆れを含んだ声で横島に言葉を投げる。突然姿を見せたナルトにしばし呆然とした横島だが、告げられた言葉にむっとした。
「んだよッ、危ない目にあってるのを普通見過ごすわけにはいかねえだろ」
掴み掛るように横島は怒鳴る。
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