十五 断崖絶壁
[2/4]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
まハヤテをからかった。夕顔という名の彼女がいると白状したハヤテに思い切り嫉妬したのは余談だ。
ハヤテは忍者の基本を懇切丁寧に横島に教える反面、月代についてさりげなく問い掛ける。その質疑をのらりくらりとかわしながら、彼の面倒を診るのが横島の日課だった。
(ナルトもこんな立派な屋敷があるんならこっちで寝泊まりすりゃいいのに…)
品の良いカップに茶を注ぎ入れていた横島はふと思う。ハヤテを匿ってからというものの、ナルトは暗部の仕事で忙しいらしい。そのため彼と顔を合わせる機会が以前より少なくなった。
見兼ねた横島が「飯の時くらい帰って来い!」と言ったので食事時には屋敷に帰ってくるが、それ以外はアパートで過ごしているのだ。里人の眼を欺くためだと本人は言っていたが本来屋敷の持ち主はナルトであるので、横島はどうしても気がひける。
カップから立ち上る湯気をぼんやりと眺めながら、彼はナルトが横島を警戒していた時の事を思い浮かべた。
横島の記憶を読む以前、ナルトはアパートに一度も帰らなかった。屋敷で過ごしたのかと聞くと思いもよらぬ答えが返ってきて驚愕したのは記憶に新しい。
木の上で野宿したというのだ。実際は横島を監視するためアパート近くにいたのだが、屋外で夜をあかしたのに違いは無い。
それでも今では、横島の料理のために屋敷へ戻ってくる。アパートに置いてあった食料品は全て屋敷に持ち込んだため、食事は屋敷でとる事になっているからだ。
ハヤテがいるので月代の姿だが、これは大きな一歩である。
(そんなに日は経ってないけど、長い事警戒されてた気がするなあ…ようやく歩み寄ったって感じか?)
気位の高い手負いの獣が少しだけ近寄ったような。そんな印象を思い描き、横島はふっと口許を綻ばせた。
滝がしぶきをあげ勢いよく流れ落ちる。激しさを含む水しぶきは空に小さな虹をつくり上げた。
「へぇ…こんなとこに滝なんてあんのか…」
ほうと感嘆の声を上げながら、横島は急崖から滝を見下ろした。
屋敷を囲む森を探検していた彼は奔流の音に導かれてこの場所に来ていた。
実の所、迷子である。
買い物以外に外へ出る事をナルトに禁じられている横島は、鬱然とした気分を持て余していた。ずっと屋敷の中にいるのも飽きてしまい、看病しているハヤテも今は熟睡しているため彼は暇だった。
そこで屋敷を囲む森の中ならいいだろうと安易に考え、散歩という名の探検に赴いたわけなのだが、迷ってしまったのである。
狼――破璃はハヤテを見張っているので期待できない。そもそも屋敷から出る事自体、破璃に引き止められたのだ。口で服をグイグイと引っ張る破璃に「ちょっと散歩するだけ」と言って説得した。横島の言葉が
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ