第5話 待って居たのはイケメン青年ですよ?
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断言する事が出来た。
そう。ヤツラは、未だ直ぐそこに居るのだ。
「この霧は、天之狭霧神。私が生まれた国の霧と境界線を司る神格です」
微かな鈴の音色と共に、ハクはそう呟く。但し、この神さまは元々境や峠を意味する神であった気配も有るのですが、其処に漢字で『狭霧』を当てた為に霧を司る、と言う神格が追加された可能性も有りますが。……と、付け加えた。
もっとも、山の峠に霧は付き物。そして、その登り切った場所を境界線とするのなら、この神が境界線を司り、そして、其処に霧が顕われるのは、差して不自然な事ではない。
そうして、更に続けて、
「この洞窟は黄泉之穴。そして、かつて伊弉諾の命が黄泉の国の軍団を振り切った事でも有名な黄泉比良坂だと思います」
ただ……。
ただ、ハクと美月。そして、彼女らの足元をちょこまかとした足取りで進む白猫のタマの周囲のみ、何故かその乳白色の霧は存在せず、洞窟の中に相応しい暗闇のみが支配する空間と成って居る。
そう。それはまるで、この霧自体をこのふたりと一匹が拒絶しているかのようにも感じられる、奇妙な現象。
そして、
「この道を進んで行った先に、さばえなす悪しき国の門。邪しき鬼の来たる穴と称される黄泉の国の入り口。千引きの大岩が存在するはずです」
そう、黄泉の国。根の国。根の堅津の国などと称される場所。神話によれば、悪霊邪気の根源とされていたり、王権の根拠となる刀、弓矢、琴を授けてくれたりする、記述によって表現がまちまちな人間界に隣接する異世界の事。
いや、ニライカナイと同じ物とする説も有りましたか。もしかすると、少彦名命などとの関わりから、補陀落渡海ともなにがしかの関わりが有る事も否定出来ません。
ただ、少なくとも、現在の彼女達の周囲を覆って居る雰囲気は、ニライカナイや補陀落などが発して居る浄土や、祖霊神、太陽が生まれる場所などと言う豊穣や生命の源と言う雰囲気では有りませんでしたが。
むしろ、その逆の……。
「もし、千引きの大岩の封印が解かれたとするのなら、早急に閉じなければ、黄泉路より数多の悪鬼羅刹がこの世界にあふれ出る事となるでしょう」
まして、この境界線を示す霧が、もし、千引きの大岩の向こう側から漏れ出して来て居るのだとしたら……。
同じ方向を臨みながらの会話で有った事を、この時の美月は本当に感謝していた。
何故ならば、出会ってから今まで、殆んど緊張と言う物を感じさせられた事のないハクの言葉が、僅かに緊張した雰囲気を伝えて来ていたから。
もし、今の彼女に普段の春の属性の表
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