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少女1人>リリカルマジカル
第二十九話 少年期K
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溜まっていたものが一気に抜けた気もする。散々言い合っていた相手もどこか吹っ切れたような顔だった。

「なんか、色々バカバカしくなった」
「あはは、そこはちょっと同意です」

 2人そろって口元に笑みが浮かんだ。副官さんは短く切りそろえられた髪をまた手で掻き、俺に視線を向ける。それに俺は自然と姿勢を正していた。

「……俺は昔から白黒つかないことがあまり好きではなかった。そしてわからないことを棚上げにずっとしておくことも嫌いだった。何かしら俺にできることがあるのなら、進めるだけの道があるのなら俺は進んできた。そして、これからもそれを続けていこうとも思っている」

 それはなんだか、副官さんらしいと思った。この人は決断できる人なんだろう。自分を信じて、自分が目指す道を夢見て真っ直ぐに進んでいける。そこに切り捨てる何かがあっても、きっと真っ直ぐに。それは間違いなく彼が持つ強さだ。

 けど、それって少し怖い。その切り捨てたものが大切なものでも、必要ならば切り捨ててでも進んでしまうかもしれない。その切り捨てた心に傷を抱えて。そんな風に進んで、目指す先にもし間違いがあることに気づいてしまっても……それでも彼は進むのだろう。目指した夢に希望を夢見て、切り捨てたものを無駄にしないために。


「だから、一度はっきり聞くぞ。答えたくないなら答えなくてもいい。すべて言いたくないならそれでもいい。それはお前に任せる。お前はなんのために必死になる」

『この提案を受け入れてくれるかはおじいちゃん達に任せます。だけど、受け入れても受け入れなくても、なぜそのことについて俺が問うのかには一切触れないでほしい。それだけです』

 この人わざとかよ、と一瞬考えたが、じっと俺を見抜く目に嘘はない。あの時おじいちゃん達に話を聞いてもらうために言った言葉とどこか似ていた。そっちの都合なんておかまいなしに、ただ受け入れるかを相手に委ねたもの。

 自分で聞くとすごく身勝手な話だと思う。話すだけ話して、聞くだけ聞けって。けどそう思うってことは、副官さんやおじいちゃんもあの時同じように思ったということだろう。なんというブーメラン。

 この問いに応える必要性はない。しかも契約だってしているのだから、言わなくてもいいのだ。彼もそれはわかっている。はぐらかしたって、沈黙したって答えを俺に委ねた時点で仕方がないことなのだから。


「――自分のためです」

 それなのに、俺は口に出していた。すべては言えない。むしろほとんどのことを話せない。だけど、嘘も拒絶もしたくなかった。

 自分の都合のみの問いかけ。だけど、その中に確かにある実直のこもった思い。ちゃんとそれに返さなきゃ、誠意を持たなくては、俺自身が自分を許せない。思いを持った言葉から逃げる、卑怯
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