第四章
[1/2]
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
「結構以上にね」
「私もね。エルザみたいに純粋ではないわ」
「ローエングリンは不思議な作品だよ、主人公が二人共ね」
「純粋よね」
「そう、そしてこの世のことを知らない」
まさにそうだ、ローエングリンもエルザもだ。
「思えば二人共そういうのを知っていったんじゃないかな」
「作品の世界の中で」
「この世は純粋なばかりじゃないからね」
「不安や苦しみもあるのね」
「そう、エルザは不安を知ってローエングリンは苦しみを知った」
ローエングリンの結末は名前を聞いたエルザにローエングリンが応じる、それが別れの証となってしまい。
ローエングリンは項垂れてブラバントを去る、エルザは別れの嘆きでこと切れてしまう。その悲しい結末もまた、だった。
「悲しみもね」
「そうね、そうなるわね」
「傍にいる人を知りたいということ、即ち」
「愛ね」
「エルザは愛も知ったけれどね」
それ自体はいい、だがそれでもだった。
「愛もまた純粋なばかりでないから」
「不安もあるわね」
「苦しみもね。ローエングリンも愛を知ったんだよ」
聖杯の城モンサルヴァートからエルザを救いに来てそれでだというのだ。
「実際あのままオルトルートがいなくても」
「それでもエルザは聞いたわね」
「愛する人を知りたいと思うからね、そして」
「ローエングリンもかしら」
「彼もまた、最初は隠していたけれど」
だがそれでもだというのだ。
「エルザを愛していたから」
「愛する人には」
イエルザレムもローエングリンになりきっていた、それならだった。
彼は真剣な顔になりそれで言ったのだった。
「自分を知ってもらいたいからね」
「だから隠しごとはなのね」
「そう、出来ないんだよ」
「そうね、じゃああのままいけばローエングリンも」
「言っていたと思うよ」
己の名前、それをだというのだ。
「エルザを愛していたからね」
「知ることが出来ない不安、言うことが出来ない苦しみ」
「ローエングリンにはそれがあるんじゃないかな」
「じゃあ貴方は今苦しいのかしら」
「苦しいよ」
実際にそうだと答える。
「舞台にいると」
「そうね、ローエングリンは綺麗で格好いい世界だと思っていたけれど」
ポップもここで言った。
「違うのね」
「うん、不安と苦しみの作品だね」
「この不安は消えないのね」
「苦しみもね」
「辛いわね。けれど」
「けれどだね」
「私達はこの作品を演じていくわ」
そうしたといったのだった、そのうえで。
ポップは舞台で稽古をしていった、イエルザレムもまた。
二人で演じそしてだった。
イエルザレムも演じた、その中で。
二人の不安と苦しみは続いた。それは次第に舞台から離れてもそうなってきていた。
エルザと
[8]前話 [1]次 最後 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ