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エルザの不安
第二章
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「それが第一幕で」
「第二幕は婚姻への期待から」
 それからだった。
「魔女オルトルートに唆されて生じた夫となる男への不安」
「不安が、ですね」
「ローエングリンという作品を作っていくから」
 それでだというのだ。
「その不安をよく描き出してね」
「わかりました」
 ポップは真剣な面持ちでベルンシュタットに答えた。
「では」
「二人はなりきってもらいたい」
 ベルンシュタットはイエルザレムも見て言った。
「ローエングリン、そしてね」
「エルザにですね」
「二人共」
「そう、なりきってもらってね」
 それでだというのだ、そして。
「最高の舞台を築いてもらうよ」
「最高のローエングリンですね」
「音楽は任せてくれ」
 ベルンシュタットは指揮者としてベストを尽くすと言い切った。
「そして君達はね」
「ローエングリン、そしてエルザとして」
「二人で」
「そうだ、頼んだよ」
 こうした話をしてからだった、ポップは舞台に入った。
 ポップは舞台稽古に脚本を続ける、そしてだった。
 何度も何度も読んでエルザになりきる、だがその中で。
 ポップは何度も何度も脚本を読んでいるうちにだった。
 エルザになりきっていく、その中で次第にだった。
 不安を感じていっていた、エルザとして。そのうえで舞台にいると。
 イエルザレムを見てさらに不安になった、それでなのだった。
 舞台稽古の後でイエルザレムを見てこう言ったのだった。
「何か」
「どうしたんだい?」
「いえ、不安で」
 それでだというのだ。
「舞台にいると」
「ああ、エルザになりきってだね」
「ええ、それでなの」
 こうイエルザレムに言ったのである。
「何か。ローエングリンを見ていると」
「また随分となりきっているね」
「エルザはローエングリンを信じたいのよね」
「そう、絶対にね」
 このことは間違いなかった、だがだった。
「それがどうしてもね」
「信じられなくなって」
「聞いてはいけない名前を聞いてしまう」
 ローエングリンは最初にエルザに己の名前を聞くなと言ったのだ、それも決して。
「堪えられなくなってね」
「ローエングリンを信じたかったけれど」
「思えば難しい話だよ」
 イエルザレムはこうも言った。
「急に出て来た人を信じろっていうのもね」
「そうよね、私だったら」
 ポップではあるがポップではなくなっていた、半分程。
「そうなっているから」
「なっているから?」
「あっ、なったらね」
 イエルザレムに気付いて己の言葉を訂正した、そこに出ていたが二人共気付かない。
「聞かずにはいられないわ」
「そうだね」
「とてもね。聞かないではいられないわ」
「そうだね、人間ならね」
「聞いてどうなるか不
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