第一章 土くれのフーケ
第六話 “虚無”と“ガンダールヴ”
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えるだろうが、こういう時に発揮されるとどうしようもない。
「減るもんじゃなし、下着を覗かれたくらいでカッカしなさんな! そんなお堅いことだから婚期を逃すのじゃ!」
逆ギレした上にコンプレックスをついてくるセクハラジジイに、ロングビルの中で何かが切れた。
思い切り尻を蹴り上げてやろうと足を振りかけたとき、学院長室の扉が勢いよく開けられた。
「オールド・オスマン! 至急お耳に入れたいことが!」
息せき切らして入ってきたのは、コルベールだった。
「どうした?」
オスマン氏は何事もなかったかのようにコルベールを迎え入れた。一方のロングビルも、机で書き物を続けていた。魔法にも勝る早業であった。
あと少しのところで色ボケジジイに私刑を与えられなかったロングビルが、その理知的な顔をわずかに歪ませて舌打ちしたことに気づいたものはいなかった。
「昨日、ミス・ヴァリエールが召喚した使い魔の平民のことで図書館で調べものをしていたところ、大変なことがわかりまして……」
「大変なことなどあるものか。すべては小事じゃ」
「まずはこれをご覧ください」
コルベールが、一冊の古い書物を手渡した。
「んん? “始祖ブリミルの使い魔たち”とは、またずいぶんと古臭い文献を引っ張り出してきたもんだのう。で? これがどうしたのかね、ミスタ……ソルベール?」
「コルベールです!」
「おお、そうじゃったそうじゃった。 君はどうもせっかちでいかんよ、ハンベールくん。 で、いったい何がわかったのかね?」
「コルベールですっ!!」
「コンビーフ」
「コ・ル・ベ・エ・ル・で・すっ!」
「すまんすまん、カミまじた」
「……ハァ、もういいです。……こちらをご覧ください」
一連のやりとりに気力をごっそりと削られたコルベールは、ため息をつきながら一枚の紙を示した。それは、士郎の左手に刻まれたルーンをスケッチしたものだった。
開かれた書物のページとスケッチを見比べたオスマン氏の表情が変わった。目が光り、厳しい色になった。
「ミス・ロングビル。しばらく席を外しなさい」
『はい』と言いロングビルが立ち上がり、部屋を出て行った。
彼女の退室を見届けたオスマン氏は、静かに口を開いた。
「さて、詳しく説明してくれ。ミスタ・コルベール」
教室の片付けを終わらせた士郎は、寮に戻るルイズに適当な事情を言って別れたあと、事前に聞いていたトリステイン魔法学院の学長がいるという、本塔の最上階に向かっていた。
ルイズの魔法……あれは失敗とは違うはずだ。この世界で魔法が失敗した際は、ただ何も起きないという話だというが、ルイズの魔法は
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