暁 〜小説投稿サイト〜
剛球攻略
第四章
[2/2]

[8]前話 [9] 最初
「人は成長するもんや」
 西本の持論だ。だからこそ彼は選手育成にも定評があるのだ。
 このことからもだ。彼はまた言ったのである。
「そしてそれが果たせる日は絶対に来るんや」
「今の近鉄みたいにですか」
「そうなんですね」
「そういうこっちゃ。今年山口が打てたのはどうしてか」
 西本はこのことも自分から述べた。
「こっちも強なったんや」
「ううむ、それはまた深いですね」
「人は成長するものですか」
「アイドルだけじゃなくて」
「野球でもなんですね」
「ほなな」
 ここまで話してだ。西本はだ。
 記者達にだ。こう言ったのである。
「後はちょっと選手のところ戻るわ」
「その選手達ですね」
「優勝を手に入れた」
「その選手達のところにですか」
「そや、あいつ等が山口を打てたからや」
 それでだと。西本は笑顔で言った。
「優勝できたさかいな」
「ううん、あの剛速球を打てたのは凄いですね」
「あれは確かに」
「さっき言った通りや。どんな剛速球でもや」
 例え山口のその剛速球でもだというのだ。
「打てるんや。練習してそれなりの力を備えればや」
「そうしてですか」
「打てるだけの力があれば」
「どんなボールでも打てる。絶対にな」
「それで優勝できるんですね」
「打ってそうして」
「そういうことや。どんな相手でも人間や」
 西本が今度言うのはこのことだった。例え山口でもだ。
「同じ人間や。絶対に打てるし。それに」
「それにですね」
「さらに」
「優勝できるんや」
 こうだ。ようやく顔を綻ばせて言うのだった。
 西本は長い間球界の御荷物と言われた近鉄バファローズも優勝させた。だがそれまでにはこうしたドラマがあった。不世出の剛速球を彼が育てた選手達は打ちだ。そうして優勝できたのである。


剛球攻略   完


                           2011・1・2
[8]前話 [9] 最初


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ