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珠瀬鎮守府
木曾ノ章
その3
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い”は、鋳潰されぬこと。現実は、常に費用に効果を求む。あいつらを仕舞いこんでも結果は生まれん。ならば道は一つ、奴らに解らせるしかない。無鉄砲がどんな結果を生むのか。例え分かる前に、幾人が沈もうとも」
「……」
「俺は、提督だ。責任は全て俺が持つ」
 彼には、何を言っても無駄だろう。そして今、私は理想を語っている。言う意味すら成さぬ言葉を、彼にかけて何の意味があるのか。提督だって辛いのだ、仲間を危険に晒すことが。その上、ただ一人でそれを受け入れようとしている。
 私には、何もできない。感謝の言葉すら、かけることは叶わない。そうすれば、木曾たちがもし死んだ際に、私はその判断に対して礼をかけることとなる。
 だから、ただ私は、彼に無言で頭を下げることしかできなかった。


 時刻一四〇〇。鎮守府正面海域。
「敵艦を発見! 繰り返す。敵艦を発見! 各艦は戦闘に備えろ!」
 天気晴朗、波は静か。港を出発してから、大きな天候の変化はない。絶好の海戦日和だ。
「敵艦反航、艦数四。敵先頭艦に照準を合わせろ」
 初陣を飾るのには丁度いい敵だ。弱すぎもせず、またこちらが危機に陥るほど強くはない。無論油断はしないが。
「タイミングを合わせる。私の掛け声で斉射だ! 行くぞ。3,2,1、斉射!」
 砲弾が幾つも放たれた。それは青空に光る点として、流れ星のように翔ける。けれど、流れ星のように消えることもなく走り、敵艦の元へ落ちてゆく。
 発射の爆音と一拍おいて怒轟。
「不知火、敵二番艦に着弾を確認」
「響、敵に致命弾を確認」
 戦いに狼煙は必要なくなってからもう随分と経つが、敵艦からは狼煙のような煙が上がっていた。
 瞬間、私のすぐ横を光の玉が翔けていった。続く死の羽音。砲弾が、空を切る音。
 後方で爆音。振り返ると、水柱が立っている。さらにまた死の羽音。
(敵が撃ち返してきている!)
「被害情報報告!」
「長月、小破! 至近弾の煽りを食らった! 戦闘能力はまだ失っていない、引き続き戦闘を継続する!」
 心のなかで小さく毒づく。今回は偶々先制できたが、この有様だ。向こうに艦載機でもあったら、全く違う結果になっていただろう。
 気を引き締めろ、ここは戦場だ。
「敵艦隊からの砲撃が沈静化、主砲装填だと思われる。敵軽巡洋艦及び駆逐艦の轟沈を確認、残りは二艦。依然敵艦隊に航空戦力は見当たらない。敵艦隊に近づく、ついて来い!」
「響、異議あり。敵旗艦及び二番艦は轟沈している。ここから砲撃を行うだけで十分に対処可能と判断する」
 響が異議を唱えた。流石、提督のお墨付きか。
「そうかもしれないが、残りの二艦は殆ど無傷。逃げられる可能性もある。今撃滅するべきだ」
「響、了解」
 響は、思ったよりあっさりと引き下がった。こちらの考えを知りたか
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