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珠瀬鎮守府
木曾ノ章
その3
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「……分かった。お前がそう言うならば」
 早速提督の元を訪ねた。不知火が言ったとおり、ただ言うだけで決まった。私が予想していた反対も何もなかったことに、少し疑問を覚えた。
「提督、如何なものかと私は思います」
 話を割って入ったのは、鳳翔さんだった。今まで分を弁えた行動しかしなかった彼女が、提督に異議を唱えるのは意外だった。
「どうして、そう思ったのですか鳳翔さん」
 それは不知火もだったのだろう。驚いた風に、鳳翔に尋ねた。
「殴りこみの水雷戦隊。提督、貴方はどうお考えなのですか。彼女がそう言ったから。ではなく、貴方がどう思ったのか私は聞きたのです」
 けれど、鳳翔さんは答えない。唯提督に声をかける。その声音は、どこか怒っているようにも感じられる。
「……彼女たちの“思い”と、“費用対効果”を考えた。それで、私は良いと判断した」
「ならば私も参加します。私の思いと費用対効果を考えてください。意義はないはずです」
「……」
 提督が、黙した。いつでも威厳としていて、合理的であった提督が、鳳翔の言葉で言い淀むとは驚いた。
「別に俺は構わないが、ただ水上機を外してくれよ、鳳翔さんよ」
「ええ、構わないわ」
 確か鳳翔は、足はそれ程早くはなかった。けれど数少ない隊員になりたいと言ってくれた人だ。断る理由も何もない。
「俺は、お前がそう、思うなら、そうで……」
 提督は、不知火の時とは比べるのが馬鹿げているとまで言うほど、歯切れが悪い。
 提督と、鳳翔には過去に何かがあったのだろう。そして、反応を見るに、不知火は詳しい事は知らない。
「いや、待て、鳳翔よ。分かった。俺の信頼の置ける艦を第二艦隊に所属する。それではダメか」
「私は信頼が置けないと?」
「そう取ってくれても構わん。お前の今の言葉でな」
「そうですか、私は逆ですよ。貴方の先ほどの言葉で、こう決心してしまったのです」
「兎角、お前は降りろ。代わりに俺がよく相談した上で、他のものをつける」
「待てよ、鳳翔がこっちに来るって言ってるんだろ? なんであんたが引き止めるんだ」
 言い合いになり始めた二人の間に割って入る。どうも二人共、平常心を保てていないようだ。二週間をこの港で過ごして、こんな提督も鳳翔さんも初めて見る。
「彼女を艦隊に入れても、ただ沈むだけだ」
「提督、あんたそれを本気で言ってるならぶん殴るぞ?」
「っ……済まない鳳翔、今のは、俺が悪い」
「いいんですよそんなこと。“事実”です。囮ぐらいはできます」
「おいおい、鳳翔さん、それはどういうこったい? 最初から囮ってのは、面白く無いね」
「不知火もそう思うよ。鳳翔さん、あなた何を考えているの」
 鳳翔は、返事を返さない。只拳を握りしめている。
「鳳翔、後で話がある。今は、第二艦隊配属依頼を取
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