Episode2 新聞
[2/3]
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
うん、いいと思う」
「せやろ!じゃあ店出よっか」
先行して店を出るシスイに、支払いを済ませた俺も続いた。
手持ちのコルは少なくなっていたが、いい買い物をしたという感覚が強かった。それに、俺自身今の恰好を気に入っている。
「どう?いい感じ?」
「あぁ、ありがと」
「カイトの髪の毛見たときにな、濃い蒼で合わしたらいいなって思てんよ!」
興奮気味に語るシスイを見ながら、自分の髪を触ってみた。癖もなくペタッとした襟足長めの髪を、現実の黒から今の紺に変えたのはそれなりに前だ。自分の意志で変えたにもかかわらず、妙に慣れられずにいた髪色だが、今なら素直に受け入れられそうだ。鏡を見たときになんとも思わなかったのがその証拠。
ただ、ここまでバッチリ仕上げてくれた相手が、今日会ったばかりだということに疑問が残らないわけはなかった。
「ま、色々助かった。けど、なんで助けてくれたんだ?」
素直な俺の疑問に、前を歩いていたシスイが踵を軸にクルッと振り返る。
「人助けが好きやから…ってのはどう?」
「いや、似合わない」
俺の答えにシスイの顔に苦笑が浮かんだ。シスイが小さく舌を出す。
「バレたか。…うちな、新聞書こうって思うてるんよ」
飛躍した答えに首を傾げながら、視線で話の先を促す。
「この世界って、娯楽とかあんまりないやんか?だからな、ちょっとでも普通に生活出来るように、新聞作ってみようかなって」
「…新聞って普通の生活に必要か?」
「他の人は分からへんけど、うちは《こっち》と《あっち》が何が違うって聞かれたら、真っ先に『新聞がないです』って答えるから」
そういって屈託なく笑う。なんだか見た目と中身が一致しなくて、頭が混乱してくる。
大人っぽい外見の割に、発想の単純さや行動の安直さが子供っぽい。
「だからな、前線とかこの世界をよく知ってる人に知り合いが欲しいんよ」
「なるほど、新聞を書くにあたって情報源が欲しいと」
「…なんやその言い方やと、うちがカイトを利用してるみたいや。そんなつもりないんよ?」
困ったような顔をするシスイに、手を左右に振って否定の意を示す。
「俺なんかで良かったら手伝うよ」
「ホンマか!良かったぁ」
シスイの顔に笑顔が戻る。少し大袈裟なくらいホッとしたような表情をする。
「そんな大袈裟な」
「そんなことないよ!だって君が協力者第一号やし」
これは意外だった。こんなグイグイ来るシスイのことだから、他にももっと協力者がいるものだと思った。
「《攻略組》の人達って、なんかピリピリしとるよね。だから声、掛けにくうてな」
「そっか。…あれ、俺は?」
「カイトはなぁ…人畜無害な感じ」
「それって褒められてるのか?」
[8]前話 [1]次 [9]前 最後 最初 [2]次話
※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりを挿む
[7]小説案内ページ
[0]目次に戻る
TOPに戻る
暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ
2024 肥前のポチ