暁 〜小説投稿サイト〜
おいでませ魍魎盒飯店
Episode 3 デリバリー始めました
テンチャークエスト
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大地に叩きつけられる可能性が高い。
 そうなれば、すぐには動くことも出来ずにやつの一撃を受けることになるだろう。

 ならば、相手の隙をついて自分から降りるのが最上の策だ。
 さっさと別の場所に逃げなければ。

 心の中で呟くと、ポメは手近にあった小さな枝を一本だけへし折った。
 そして、その枝の先を手早くナイフで斜めにカットすると、フォモールと呼ばれる魔族たちの力を源とする神聖魔術を口にする。
「……この鏃は、"王の目"に刺さる!」
 その言葉と共に、ポメの手から鋭い木の枝が放たれた。
 相手の称号を触媒に使った"必中の魔術"である。 宣言と共に放たれた矢は決して狙いを違えない。
 ただしこの魔術、同じような名前や称号を持つ相手が傍にいると、一番手近な相手にあたってしまういう欠点がある。
 例を挙げるなら、三人の"鈴木さん"がいたとしたら、一番近くにいる"鈴木さん"が自動的に攻撃対象として選ばれてしまうのだ。
 そんなクセの強い術であるためなかなかに扱いが難しく、習得するものも少ない珍しい術である。
 だが、ここには"森の王"であるテンチャー以外に対象となる存在は無い。
 ポメの一撃は、正確にテンチャーの右目を抉った。

「ほふっ!?」
 まず大概の生き物は、目に向かって攻撃を向けられると怯んでしまう。
 それはテンチャーも例外ではなかった。

「ほふぅぅぅぅぅっ!!」
 森の大気をつんざくような悲鳴が地面を震わす。
 避けることも逃げることも出来ない攻撃に、かろうじて反射的に目を閉じたものの、薄い目蓋では理力を帯びた投げ矢を防ぐにはあまりにも無力であった。
 眼球に突き刺さるほどの威力こそ無かったが、目への一撃は精神的にも物理的にも小さくはない。

「今だにゃ!」
 相手がひるんだことを見計らうと、悲痛な叫び声を尻目に、ボメはスルスルと大樹の枝から地上に降りて、背を向けてすたこらと逃げ出した。

 ……だが。

 ――ネチャ
 踏み出した足に、なにかタールでも踏みつけたような感触が伝わる。
「にゃ?」
 ふと気がつけば、足になにかベトベトした油のようなものがこびり付いている。
 しかもその一部は大きな石塊となっており、まるで大量の樹脂をひっかぶったような感触である。
 さらによく見れば、そのこびり付いた樹脂は徐々にその質量と容積を増大させているようだ。
 いや、これは普通の樹液ではない。

 ま、まさかコレは……琥珀!?
 琥珀とは、その内に生き物を孕んだ状態で産出することのある奇妙な宝物である。
 その正体は、長い年月の果てに化石化した杉や松の樹液。
 そして森の王と恐れられるテンチャーの主食は、魔界産の糸杉(シダー)
 それは棺を作るための樹木であり、聖なる死の
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