橋姫と邪仙
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の烏だろう。猫とは友人だったはずだから、運搬のために引渡されでもしてここに落としていった。爆走したせいで岩を落とし、生き埋めにして。
生気を感じない青い肌。探し物の死体。猫と烏。ああ、そういう訳かと理解する。後でカラスは殴っておこう。そう決める。
「ほら、芳香。起きなさいってば」
「ん〜。その声は……誰だ」
「主を忘れない忘れない。青娥よ」
「おーせいが……おー?」
「……帰ったら整備し直さないとね」
立ち上がった死体――芳香の服の汚れを青娥は叩く。
傷だらけの体。赤い中華服。帽子。そして何よりも額に付けられた札。
「キョンシー?」
「その通り。私の自慢の一品。それとごめんなさいね。この子は人の欲を食べる。そして生気も。あなたの気が立っていたのはこの子が傍にいたせいだと思うわ。怪我をしてお腹がすいたんだと思う」
「あーなるほど」
「全く、変なものつまみ食いしちゃだけでしょ。モテなくなるわよ」
「おい。おい」
今思えば確かに気が立っていた。眠気もそうだしテンションもだ。最初の方はやたらと噛み付いていたが、普段はあれほどじゃない。途中、あの場所から離れてから落ち着いたのはそういったことだったろう。取り敢えずやっぱり烏は見つけ次第ボコす。ついでに猫も。出来たらだが。
そして思い出す。少し前に会合で聞いた話。外から来た新たな一団。その中にいた者のことを。目の前の美女の、青娥の正体を。
「探し物も手に入れた。では、私はこれで帰るわ」
「さっさと帰りなさい。妬ましい思いをぶつけられる前に」
「ふふ。ほんとうに変わらない」
芳香を携え、青娥は出口へと足をすすめる。
きっと、猫に攫われることでもない限りもう彼女が来ることはないだろう。何せここは地獄の入口だ。
取り敢えず次の会合では今日会った美女の話題でも出そう。出して妬みを出そう。そうパルシィは決める。あと狸も吊し上げよう。
ふと、青娥が振り向く。
「ああ、そうそう」
まだ何かあったのだろうか。さっさと行けばいいものを。眠気が復活し、二度寝したいパルシィは思う。
「あなたとの話、楽しかったですわ。また話せるといいですね」
「こちとらただ妬ましいだけなんだけど」
「それが良いんです。その妬みが、欲への素直さが好ましい。煙管を吸ってあの程度で済んだのも良い。駄目な人は甘ささえ感じず、吐いてしまう。きっと、吸えば好きになれると思います。よければ分けてあげますわ」
「それはどうもご丁寧にその優しさが妬ましい」
「ふふ」
楽しそうに青娥が笑う。もう、最初の気味の悪さなど、パルシィには感じられなかった。
「霍青娥、と申します。またいずれ。その時を楽しみしています」
「水橋パルシィ。さっさと帰れ仙人。その楽し
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