橋姫と邪仙
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「――まあ、戯言ですけどね」
そう、それは戯言。青娥が勝手に妄想し積み立てた、想像の中にしかその存在を主張できない楼閣。
否定すれば、風に巻かれる砂のように崩れ行くはかない理論。
「いや、ありえないからそれ」
そして躊躇いなく否定する物がここに一人。
「私が妬むのはただ妬ましいと思うから。それが妖怪としての私のあり方だから。人が腹減ったらご飯を食べるのが向上心? 馬鹿を言っちゃあいけない。それと同じさ」
「はっきりと言いますね。褒められることなんて、きっとなかったでしょうに」
「まあね。でも、だからといって靡くつもりはないわよ。他人の評価で私の妬みをどうこう言われても困るわよ」
確かに褒められたことなどない。それが自分のあり方だ。だからこそその在り方を貫く。会ったばかりの奴に知ったかぶってどうこう言われるなどお断りだ。
第一、パルシィはそういった知ったかぶりを晒すような上から目線やろうが大っ嫌いなのだ。反吐が出る。自分の考えを正しいと思って押し付けたりとか自分を信じきってご高説を垂れるやつなんか虫酸が走る。
話を聞けば理解してもらえる? 理解してもらえるまで話す? 自分が相手を正す? 救う? 助ける? 理解させる?
死ね。あと妬ましい。
それが答え。橋姫、水橋パルシィの答え。
そんなパルシィを見て、楽しげに青娥は笑う。
「フフフ。やっぱりね。いいわ。そうよね、そうでなければならない。簡単に揺らぐ何てつまらない。自分がないのと一緒。見込んだとおりだわ」
楽しげに、愉快そうに。
「最初は暇つぶしのつもりだった。面白そうな相手がいるから、適当な戯言をぶつけて揺らして遊ぼうと思った。心を支えにする妖怪の心を歪める、言霊遊び」
「うわ、趣味悪」
「ごめんなさいね。けど、面白かったわ。結構あなたのこと好きになれそう」
「あ、悪いけどそういう趣味ないわよ」
「ふふ、あら残念」
そう言ってまた楽しそうに青娥は笑う。髪の櫛を抜きながら近くに歩いて来るのをなんとなくパルシィは避ける。さっきの宣言のあとに近寄られても気味が悪い。本気だとは思わないが、取り敢えずなんとなくだ。
「楽しんだし、そろそろ帰るわ」
青娥が見るのは壁の一部。先ほどまでパルシィが座っていたりしたすぐ傍だ。何かあるのかとパルシィは目を凝らす。入り組んだ岩や石の岩盤があるだけ……
「起きなさい、芳香」
リン。櫛が岩に当たり音が鳴る。そう、当たっただけ。なのに何故か岩が崩れ出す。そしてその下からひとりの少女が現れる。
「死体……?」
「遠からずとも近からずよ。ほぼ正解。この子が私の探し物」
気づかなかったが、ずっとそこにいたのだろう。思い当たるとしたらやはり、あ
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