橋姫と邪仙
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女――青娥がもにゅもにゅと摘む。摘んで縦縦横横する。思ったより近くの青我の顔に息を呑む。丸を書かれる前に驚きから立ち直り腹パンを放つ。が、よけられる。
「ふん! そんなもの喰らわぬ!! でね、取り敢えずあなたは色んなものを羨んでいる。つまり、色んなものを欲しがっているの」
「楽しそうねあなた」
「楽しいわよ。こういった推論を重ね物事を探る。自分の理を立て探し物をする。知らないものを探る。それは酷く甘美的よ。あなたも自分のことを調べたいと思わない?」
「断るわ。どうでもいいし。ほら、さっさと続きがあるなら言いなさい。妬んであげるわ」
「ふふ。興味がないと言いながら聞くだなんて。知りたいって思ってるじゃないの。この、この!」
やたら楽しそうな笑顔で青娥はパルシィの頬を突っつく。ぷにぷに、ぷにゅぷにゅ。我慢してたがウザくなってパルシィは振り払う。
「何かを得たいと思うことは普通よ。欲をなくしたら生き物は終わり。特に、私たちのような長い時を息、これからも長き生きるものはね。寿命が、長い牢獄に変わるもの」
「やっぱりあなた歳じゃない。私は違うけど」
「若いですー。ピッチピチですー。まあそれはさておき、たくさんを望むというのはいいことです。向上心の表れでもある」
「向上心? ああやだ、前向きすぎて妬ましい」
「ふふ、あなたのことですよ」
ピシ、と煙管の先がパルシィに向けられる。ムカついたので不意をついて奪う。
「あっ!?」
「ふむ」
パクリ。どんな味がするものか気になり咥える。そして吸う。
「……煙いわね。何か甘いけど、それ以上に苦さが鼻nブフッ!! ゴホ、ゴホ……」
「慣れれば美味しく感じますわ。ほら、返してください」
奪い返される。ついでに背中を摩られる。
少し経ち、落ち着いてきたのを見て青娥は離れ、再びを煙管を咥える。
「知るというのは自らを高めようとする行為です。知らぬを無くし知るを知る。今の行為もそうです。あなたは知らない未知に手を伸ばし、自らの知にしようとした」
「ムカついたから奪っただけなんだけど」
「それでも、ですよ」
ふわりと、青娥が微笑む。気味の悪さなどなく、酷く優しく。
「妬むいうのは羨むことであり、その高さを欲すること。高みに手を伸ばす願望。自らを高めたいと思っている欲の現れ。あなたは、人一倍の望みと向上心を宿している」
「うわ、気持ち悪。鳥肌立つようなこと言わないでくる」
「そう。そしてそれを抑えるのもまた妬み。妬むという自身のありかたで、それ以上の一歩を抑えている。ですからきっと、あなたは一歩を踏み出せれば高みに行けるのでしょう。その人一倍の向上心で」
そう言って青我はまた、煙を吐く。自分の言葉を誑かすように、けむに巻くように。
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