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形而下の神々
10日間の小さな行軍記
行軍1日目
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んでしまうのです」

「……なるほどね」


 要するに、神器『騎士の誓い』を胸に刺すと口から石を吐き出す。

 その吐き出した石を誰か、すなわち奴隷の持ち主に渡せば、その奴隷の持ち主さんが奴隷に対して「死ね」と思うだけで奴隷は息を引き取ると。

 なんとも恐ろしい神器だな。しかも死因が「心臓爆発」だなんてなんと恐ろしい。

「じゃあここの子供達はみんな自分で『騎士の誓い』を胸に刺したのか?」
「まぁそういう事になるんじゃない?」

 グランシェは、さも興味なさ気に返す。

「多分、あのマストルとかいう爺さんが12人分の宝石を持ってるんだろうよ」

 と、さらにグランシェは続けた。

「そりゃあ手枷も要らないし武器の携帯も自由だな。死ねと思うだけで殺せるんだもんな」

 奴隷主にしてみりゃ、こんなに便利な神器は無いだろうな。奴隷解放なんて事、この世では起こせないかのも。
 リンカーンもお手上げかねこれは。


 ちなみにその奴隷の子供達は今、火を焚いて順番に見張りをしている。

 夜間は奴隷が交代で見張りをするのだそうだ。まぁ見張りなら戦闘経験は要らないもんね。

 傭兵もゆっくり休めるし、マストルにしてみりゃ一石二鳥ってトコなんだろう。当のマストルは休んでばっかだけど。

「なぁグランシェ、あのマストルとかいう爺さん、どう思う?」

「………………」

 ……返事が無い。グランシェは寝息も立てずに静かに眠っていた。
 仕方ないのでヤツの寝相に殺されないよう祈りながら俺も目をつむる。どちらかと言えばグランシェに見張りを付けてほしいくらいです。



 その夜、俺の悲鳴に傭兵達が飛び起きてブチギレられたエピソードは、永遠の秘密である。



     行軍1日目
      残り傭兵30名。
      残り奴隷12名。

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