アインクラッド 前編
加速しだす歯車
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と言う証拠は存在しない。マサキを欺くためのフェイクということも可能性として考え得る。だが、マサキは推測によってその可能性をある程度否定できていた。
なぜなら、この文章はマサキが《風刀》スキルに対しての質問を茅場に送ったからこそのものだからだ。もしマサキがその質問をしなければ、茅場はマサキを騙すことが不可能になってしまう。そんな不確定要素が大きすぎる手段を茅場が使うとは考え難い。
それに、茅場にはマサキを騙す理由も、それによって得られるメリットもない。探せば幾つかは見つかるのかもしれないが、わざわざシステムに新たな武器カテゴリを設定し、その武器をマサキに送り、ご丁寧に質問に答えてまで騙すほどの理由は、恐らくないだろう。むしろこの一連の行動は、マサキをこの世界で生存させるための特別措置と考えた方がしっくりくる。この世界での情報の重要性はアルゴたち情報屋が示す通りであり、その情報を対価なしに与えるということは、それほど破格な条件なのだ。
「……さて、あいつは一体何を企んでいるのやら……」
もう一度獰猛な笑みを浮かべると、マサキは考察を切り上げて立ち上がった。
もう少し考察を続けても良さそうではあったが、あくまでこの情報はジグソーパズルで言う1ピースでしかない。そのピースが何色で、どんな図柄が描かれているのかを考える必要はあるが、それだけでジグソーパズル全体に描かれた絵の内容を全て正確に想像することは出来ない。結局、パズルの全体図を見たければ、全てのピースを集めるところから始めなくてはならないのだ。
マサキはドアに向かって歩き始め、ふと壁際の時計に視線を投げ掛けて――
「……おい」
一体誰に向けたのか、自分でも解らないままに呼びかけた。時計の針は一言も発しないまま、現在の時刻がトウマと約束したそれの15分後だということを物語っている。気付けば、トウマからのメールが受信トレイに存在していた。
「…………」
――彼の性格からして、怒ることはないだろう。「少し用事を片付けていた」とでも言えば納得する可能性が高い。
理詰めで考えればそこまで気に病む必要はない。にもかかわらず、マサキは一気に眉をひそめ、次いで諦めたように首を振った。
「……ハァ……」
もう数えることも放棄した溜息が板張りの床に沈殿し、マサキが歩く傍でギシギシと音を立てていた。
「ぐるおぉぉおっ!」
低い咆哮と共に、眼前のゴブリンが持つ粗雑な片手直剣が薄水色に輝いた。直後、ソードスキル《ホリゾンタル》が発動し、緑色の右手に持たれた剣が水平に振るわれる。
マサキはその初動を確認すると、上半身を反らしながら重心
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