act-1"the-world"
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して…あんた恥ずかしくないわけ!?」
声の主―カイドウ ミノリはコウスケの反応を待つまでもなく二人の間に割って入り、ユウトを戒める手を振り払うとコウスケを突き飛ばした。「ユウト、怪我はない?」肩越しに背後のユウトに問うと、彼は視線を外してから、しばらくの間を置いた後に小さく頷く。それを見止めると、再びその視線をコウスケとその一味に向ける。体ばかりが成長した、幼稚な子供どもに。
その視線を受けたコウスケはちっと大げさな舌打ちをして見せ、ミノリとその背後で視線を落とすユウトを見やり、蔑むような笑みを見せ、嫌みったらしく答えた。
「良かったなぁ1年生、大好きなミノリお姉ちゃんが助けに来てくれたぜ。ほら、お姉ちゃんと一緒に保健室でも行ったらどうだ?……優しくしてくれるかも知れないぜェ」
「ドウミョウジ、あんた―!」怒りを隠すことなくミノリは食ってかかるが、それを遮るようにユウトが彼の言葉に応えた。
「大丈夫です、本当に…それと…さっきはごめんなさい。怒らせるつもりは無かったんです……」
ユウトはミノリとコウスケの間に入るように歩を進めると、一度彼を見据え、深く頭を垂れた。そして再度告げる。「ごめんなさい」と。ミノリはその態度に唇を噛み、対するコウスケは頭を下げるユウトを見下し、鼻で笑うと背を向け、取り巻きの間を抜けてコートへと向かった。取り巻きの一人がサッカーボールを拾いあげ、別の取り巻きがユウトの足下に唾を吐き捨てる。ようやく嵐が去った。落ち着いて読書の続きができる―わけがなかった。
ミノリは彼の手を取ると紅葉の木の下へ強引に引っ張り、彼の目を見据えて告げた。
「どうしてユウトが謝る必要があるのよ!ドウミョウジがわざとボールを蹴ったことくらい分かってるでしょ!?」
「本当に僕を狙ったかどうか分からないし……それより、なんで―」
「ミノリ姉ちゃんがここにいるのさ」ユウトはその一言を口にすることができず、言い淀んだ。
コウスケが馬鹿にするように口にした「ミノリお姉ちゃん」というのは皮肉でも嫌みでもなく紛れもない事実であり、ユウト自身が実際、そのようにしてミノリの名を呼んでいた。親同士の親しかった二人は幼い頃から共に遊び、ミノリはユウトを弟のように可愛がり、ユウトはミノリを姉のように慕っていた。端から見れば本物の姉弟のようだったろう。ユウト自身もその例外でなく、物心がついたときには彼女を「ミノリ姉ちゃん」と呼び慕っていた。
だが、時が移ろい二人も成長する。ユウトは16歳に、ミノリは18歳に。そしていつ頃からか、彼はミノリを呼び慣れた「ミノリ姉ちゃん」で呼ぶことを抵抗を覚えはじめていた。その原因は恥じらいと、コウスケのような自らを見下し、嫌がらせの対象とする者から標的になる恐れである。しかし彼がその呼び方
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