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真・恋姫無双 矛盾の真実 最強の矛と無敵の盾
黄巾の章
第9話 「準備はどうか?」
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のか……よほど疲れたのだろうな」

 荷台にも矢や刀傷がついていた。
 泥にまみれてよくわからなかったが、一部の荷車は火がつき焦げたような跡すらあった。

「何人かの兵から話を聞きましたが、あの郷循という男、かなり慕われているようですね。隊を逃がすために一人で囮を引き受けたりしたようです」
「そうか。顔も酷い青痣があったし、相当無茶をしたようだな。一角の男なのだろう。ああいう男がこれからの黄巾を支えるのだ。そうは思わんか?」
「はあ……」

 副官はあいまいな返事を返す。
 見た感じ、たしかに体付きもよく、武将と言っても過言でない風体はしていた。
 だがあの顔の青痣が、多少は見られる顔だったのを酷くしている。
 どちらかというと――

(あの青痣は、闘ったというより痴話げんかの痕みたいな気もしたが……)

 まさかそんな男が輜重隊を率いてはいまい。
 官軍にしてもそんな者を間者に使うとも思えない。
 だとすれば官軍の囮として、その兵ともみ合ってついた痕と考えるのが妥当だろう。

「それより、これで――」
「申し上げます!」

 馬元義の言葉を遮るように、伝令兵が声を上げた。

「なにごとだ!?」
「は! 山の反対側の麓に官軍らしき軍が陣を作っています!」
「なにい!? 先程引いた連中か? 数は!」
「はっきりとはわかりませぬが、炊き出しの煙を見るに一万はくだらないかと!」
「一万か……」

 馬元義が顔を顰める。
 輜重隊を助けた事で、この場所が漢に知れたと見るべきであろう。
 だが、あれから二刻ほどしか経っていない。
 あの部隊の本隊が来たと見るべきか。

「細作を放ち、すぐさま見張れ! それと私が一万を率いて山の反対側へ移動する。万が一にも奴らに高所を取られたら、この砦が危険だ。砦の指揮は副官に任せる。周辺に気を配れよ!」
「はっ! すぐに手配を!」

 副官と伝令兵が指示を伝えに走り出す。
 馬元義は、この周辺の地図を広げて策を考え出した。

 この時、既に輜重隊の疑いは誰の頭の中からも霧散していた。

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