黄巾の章
第9話 「準備はどうか?」
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撤退していきます!」
「そうか! では砦前で輜重隊を臨検する! 怪しいそぶりを見せたら容赦なく斬れ!」
「はっ!」
馬元義は、黄巾を頭に巻いた輜重隊へと近づく。
千人ほどいるだろうか。
さすがに追われて疲れたのであろう。
どの兵も傷つき、疲れ果てた様子で一息ついていた。
「この隊の責任者は?」
「あ……私です」
地面にへたり込んでいた一人の男が、のろのろと立ち上がった。
顔には、治りかけてはいるが酷い青痣があり、相当な激戦だったようだ。
「大丈夫か? ずいぶんと顔が腫れているが」
「ああ……追ってくる官軍の連中ともみ合いまして。酷い姿で申し訳ありません」
「いや……すまぬが荷を検めさせてもらってよいか? おぬしらを疑うわけではないが、砦に変なものは入れられないのでな」
「それはもう……どうぞお調べください」
男はよろよろとふらつきながら、荷車に載せてある藁敷きをめくる。
ずいぶんと大きな荷車だ。
一台一台の土台も太くて、大の男でも三人がかりで曳く必要があるだろう。
その上には俵や武具や資材の入った箱が乗っている。
これをあの集積所から官軍に追われるように逃げてきたのだとしたら……怪しい。
「米、麦、アワ、ヒエ、キビや大豆……箱には手当たり次第に詰め込んだ資材があります。慌てて集積所から持ち出したものですので、中身が均一ではありませんが。どうぞお調べを」
「そうか……すまぬが、糧食はおぬしが口にできるか?」
「ああ……そうですね。ではどこでもお好きな場所のものをどうぞ。痛んでなければいくらでも食べます。その前に水をもらえませんか?」
「あ、ああ。そうだな、すまぬ。だれか、竹筒を渡してやれ!」
馬元義が近くの雑兵に命じると、その一人から水が入った竹筒を受け取る。
「すみませぬ……ゴクッゴクッ……いつつ、でもうまい」
「いや、こちらこそすまぬな……そんな状態なのに疑うようなことをして」
「いえ……お気持ちはわかりますので」
「すまん。では何箇所か抜き取ったものを食べてくれ」
馬元義が兵に命じさせて、少量ずつの糧食を痣だらけの男に食べさせていく。
どうやら逃げ続けてから、何も食べていなかったのだろう。
生であるのにも関わらず、がつがつと食べる様に馬元義の疑いは完全に消失した。
「ああ、慌てて喰うな……腹を壊すぞ。すぐに砦に案内する。そこでしっかりと火を通したものをくってくれ」
「はい、ありがとうございます。どうか私より兵たちに暖かいものを……」
「……お主の様な部下思いの者を疑ってすまぬ。私は馬元義という。お主の名は?」
「私は郷循と申します」
「郷循……変わった名だな。いや、すまぬ。貶している訳ではない
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