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真・恋姫無双 矛盾の真実 最強の矛と無敵の盾
黄巾の章
第9話 「準備はどうか?」
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あって、男が武将の一角に名を連ねるには並大抵のことではない。
 それは馬元義とてよくわかっていることだ。
 その上、周辺の賊や黄巾の同志が恐れる公孫賛の四客将と呼ばれる一人ならば、男としてとんでもなく優秀だということになる。

「しかし、その謳い文句は看過できんな」
「と言いますと?」
「乱世を鎮静す、と言うなど言語道断。乱世を鎮静するのは我ら黄巾であるべきだ。蒼天すでに死す、黄天まさに立つべし。歳は甲子に在りて、天下大吉。我らこそが乱世を鎮静して腐敗した漢を滅ぼし、世を平定するのだ。その為の黄巾であろう」
「……そうなのですか? 私はあまり(がく)はないのですが……食い詰めた上で参加したものですので」
「ふむ。まあ、一部変な考えを持つものが中心でなにやら騒いでおるが……私はその為に黄巾に参加している。ここで洛陽を襲撃し、その功を持って張角様にご面会する機を得るのだ」
「なるほど。さすがは将軍です」
「我を無実の罪で罷免した官吏どもにも思い知らせねばならぬ。特に宦官どもめ……部下に薬を盛り、私の罪を捏造してくれた恨みは今も忘れん!」

 馬元義は、本来品行方正な武官の一人だった。
 だが、宦官が要求してきた賄賂を突っぱねたことで、無実の罪で車裂きの刑になるところを逃亡したのである。
 その馬元義を拾ってくれたのが黄巾だったのだ。
 馬元義にとってこの黄巾は、自身の信念を貫く道だと信じていた。

「もはや高祖劉邦様や光武帝様が作り上げた漢は、完全に腐り果てている。この大陸にとって、漢というものは大地を腐敗させる温床でしかない。ゆえに全てを焼却し、灰の中から新たな国を作り上げるしかないのだ!」
「は、はあ……」
「一時の不評は甘んじて受けねばならん。それは後の歴史が正してくれよう。我らは賊と罵られようともこの大陸のためにも起たねばならんのだ!」

 自身の恨みを正当化し、その言葉に酔う馬元義に、隣にいた副官は完全に引いていた。
 この副官にとっては、食べるために黄巾に参加しただけなのである。
 思想も志もない、ただ生きていくための処世の術が人から奪う、というものだったに過ぎない。

「しょ、将軍のご立派な志には畏れ入りました……は、話は戻りますが、糧食の件はいかがいたしますか?」
「む……そうだったな、すまん。我を忘れてしまっていた。糧食、そうか……今どれぐらいあるのだ?」
「は、はあ。現状ですと……一月分しかないかと」
「むう……それでは洛陽への襲撃ができん。どうにか調達できないものか……」
「周辺の邑を襲いますか? 幸い洛陽からの討伐軍は打ち倒しましたし、今でしたら襲撃は楽にできるかと思いますが」
「ぬ……都はともかく、邑へか? 民を苦しめるのは武人としての矜持に反する。襲撃するならば街だな」

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