黄巾の章
第9話 「準備はどうか?」
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―― other side 洛陽近郊山間部 ――
そこは砦だった。
光武帝の時代に北方の匈奴を防ぐ砦として建てられたが、時代と共に放棄された。
それを近隣の賊や流浪の民が細々と隠れ住むことで、現代まで残っていた場所である。
だが、黄巾がその場所に目をつけて補修を行った結果、そこは洛陽を脅かす一大拠点となっていた。
元々が地質的にも水捌けが悪く、木々が折り重なるように形成された場所である。
その為、腐葉土が積み重なり足場も悪く、まさに難攻不落のようになっていた。
その場所に構えた砦には今まさに洛陽へと侵攻しようとする、黄巾二万の軍勢が準備を行っている所だった。
「準備はどうか?」
そう副官に声をかける男がいる。
男の名は馬元義という。
「は、将軍。準備は着々と進行しております。ただ……」
「なんだ?」
「は、少々糧食が心もとないかと」
「糧食か……」
馬元義は、むうと唸った。
元々、洛陽襲撃の糧食は先日届けられるはずだったのである。
だが、その糧食は義勇軍と官軍により集積場所を奪われ、その糧食の配送が滞っていた。
「あの集積所が奪われたのは本当に痛かった……まさか主戦場から離れたあの場所に目をつけられるとは思わなんだ」
「はい……武器や資材はともかく、糧食はほとんどがあの場所頼りだったのが災いしました。おかげで周辺のほかの部隊にも、脱落者や逃亡者が後を絶たないようです」
「ちっ……あそこを叩いたのはどこの軍だ?」
「は、確か……官軍は陳留刺史の曹操という女です」
「曹操……あまり聞かんが、あの場所に目をつけたのだからかなりできる奴なのだろう。義勇軍は?」
「は……それがどうも”あの”天の御遣い”のようで」
「天の御遣いだと? なんだそれは」
馬元義は眉をしかめる。
「将軍はご存知ありませんか?」
「知らん。何のことだ?」
「管輅という占師が予言したことで、漢全体に広まっている噂です。なんでも『黒天を切り裂いて、天より飛来する流星。その流星に乗りて御遣いが舞い降り、乱世を鎮静す』といった内容のものらしいです」
「なんだ、その胡散臭い占いは。その御遣いとやらが本当に現れた、と?」
「本当かどうかはわかりませぬが……その者は、ここしばらく北の公孫賛の処で客将をしていたそうです。公孫賛の四客将の話はご存知ですか?」
「ああ、それは聞いている。なんでもかなり腕の立つ武将だと言う話だったが……それが天の御遣いだと?」
「はい。四客将のうち、男は一人だけいたようです。どうもその一人が天の御遣いであると……」
「ふむ……」
馬元義が顎に手を当て、首を捻る。
この女尊男卑の世に
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