第五話 Community (前編)
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ようなずぼらな教師だが、はいそうですか、と自分の教え子を突き出すような真似はしない。一度本人から事情を聞くと保留にさせている。
「灯影よぉ、いつまでも黙ってたって話は好転しないんだ。YESかNOでハッキリさせようや」
言っている事は教師らしい。話しながら生徒から没収したP○Pを操作していなければ完璧だ。しかも音ゲーをやっているのかポップな曲に合わせてボタンをカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカカッ!!と怒涛の連打音を響かせている。
そこでようやく月日は口を開いた。
「PS○で遊んでるアホ教師にYESかNOで答えたら信じてくれるんですか?」
「あー、信じる信じる。俺はお前を信じてる」
とても軽い信じようだ。
「だが、俺の立場を脅かすのはいただけないな」
そして、とても薄情だ。
月日は深い溜息を吐いて主張を始める。
「俺は何も悪い事はしていません」
「それを俺以外が信じると思ってんのか?」
一通り遊び終えたゲーム機を机に置きながら、火縄は机の上の封筒を手にした。その中を漁って、一枚の写真を月日に差し出す。
月日は受け取った写真を見た。防犯カメラの映像を印刷したものだろう。
そこには“鉄色のリボルバーを構えた細身で背の高い青年”が写っている。丁度、月日と身体的に一致した人物だ。
それを見た月日はこう答えた。
「あぁ、昔生き別れになった双子の兄です。まさかこんな所で再会するなんて」
あからさまな棒読みだった。
それに対し火縄はこう答えた。
「それはないわ。お前のアニキは俺が殺したからよ」
「ッ! 貴様が兄さんを!!」
「はっ! 右目が見えねーくせにノコノコ戦場に出てくるからいけねーんだよ!」
「…………」
「…………」
しばしの沈黙。睨み合う両者。とんだ茶番劇だ。
(注意:ここは職員室。多くの先生方がいます)
「ま、馬鹿はこのくらいにして」
「そうですね」
さっきまでの無駄な迫真の演技が終わり、火縄は白衣の胸ポケットから煙草……そっくりの駄菓子を取り出して口に咥えた。
月日は「俺にも一本ください」と言うと「お前にはまだ早い」と拒否された。
「早かねーよ。むしろ遅いくらいだよ」と呟いてみるがダメ教師は恵んでくれる様子は微塵もない。
そんなダメ教師、火縄はポツリ、と独り言を囁き出した。
「俺よー、昔はサラリーマンで係長だった。上がりもしねー給料と昇進のために汗水流して働いて……、家に帰れば女房に小言を言われ、たまの休日も五歳の息子と〇歳の娘の相手をさせられ潰れる」
「………」
「そして、ある日家に帰ってみればテーブルに置かれた『二人を連れて実家に帰らせていただきま
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