第五話 Community (前編)
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心配をしている場合ではないと言うのに…・・・。
「え!?」
一瞬…。少女から視線を外したその一瞬…。目の前に、宙に浮く少女の膝が。吸い込まれるように青毛のこめかみを打ち抜いた。
その横に雪華は軽やかに着地した。
『―――――――何が、起きやがった?』
一部始終を見ていた金髪ですら何が起きたのか、少女が何をしたのか理解する事ができなかった。
端的な表現をするなら『気付いたら二人共倒されていた』と言ったところだろうか。
金髪は、震える唇で疑問を投げかけた。
「お、お前……予知能力者じゃなかったのか?」
すると雪華は返答した。
「予知能力? いつから私が予知能力者だと錯覚していました?」
「……なん……だと!?」
「私は一言たりとも自分が予知能力者だと言った覚えはありません。それなのに勝ち誇ったように騒いで自分達の能力を暴露する。聞いているだけで眠くなりそうでした。そもそも、組織(わたしたち)が貴殿方の悪事を調べ上げているのに、能力を調べていない訳がないでしょう…。」
やれやれ、と雪華は首を振った。聞いた本人は言葉も出ない。
「あぁ、それとですね」
再び、少女の声色が低く、冷たくなった。
無意識だろう。金髪の体が強張った。
反射的だろう。全身の毛穴から汗が噴出した。
もう自分の意思では、立つ事も逃げる事もできない。
「私はこの世で一番嫌いなモノがあります……」
金髪に歩み寄りながら、雪華は鉄パイプを拾い上げ、
「それは、『お嬢様』と呼ばれる事です」
躊躇う事なく金髪の股間目掛けて突き立てた。
………
……………
…………………
現時刻は20:47.
廃屋から出てきた雪華はインカム付き小型通信端末を使い、主水と連絡を取っていた。
『お疲れさん。セッちゃんにしては連絡が遅くなぃ?』
「色々やっていましたからね。ですが、案件(オーダー)は無事完遂しました。USBメモリは壊されてしまったので、データは直接、警備員詰め所にでも送っておいてください」
『ラジャーァ!』
「あ、すいません主水君。一つ確認が」
『何ぃ?』
「あの三人うち二人、“強度(レベル)”は何ですか?」
『? ちょっと待ってぇ』
通話状態で主水が無言になった。おそらくデータを呼び出しているのだろう。
『あったあったぁ。え〜とねぇ……二人共、異能力者(レベル2)だねぇ』
「“そうですよね”……」
雪華は少し思い返していた。侮っていた。油断していた。それは認めるしかない。
だが、違和感をより濃く感じたのは金髪が暴露(せつめい)し終えてからだ。
異能力者(レベル2)………。
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