第一章 土くれのフーケ
第四話 誓い
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朝日が昇る前の、朝霧が漂う草原の中に一人の男が立っている。
「投影開始」
男が何事か呟いた瞬間、何も持っていなかったはずの男の両手に、黒い剣と白い剣が握られていた。
男が両手に持つ剣は、一見して尋常なものではない雰囲気を醸し出していた。
男はそんな剣に一瞥することなく、一度息を大きく息を吸い込むと、裂帛の声と共に剣を振り出した。
―――ヒュッ、ピュッ、ピッ―――
男が振るう剣の速度は、両手の剣を振るごとに上がっていき、かろうじて見えるだろう剣の軌跡が、もはや、認識できない速度になるまで上がっていった。
それは、さながら風の精霊が舞踊るかのような光景であった。
男の体は、一度も止まること無く滑らかに動き続け、最後に左手に握った剣を横に薙いで止まった。
振るわれた剣に煽られた、朝露に濡れた草花が、草刈り機で刈られたの如く朝霧が煙る空に舞い上がった。
男は、剣を振った状態で動きを止め、剣を握った左手の甲を見つめた。
見つめている左手の甲に刻まれた、解析することが出来ないルーンに似た文字が、朝日が昇る前の薄暗い草原をぼんやりと照らしていた。
「ふむ、体が軽い……」
そう呟いた士郎は、止まっていた体を動かし始めた。
再度動き出したその動きは、先ほどの風の様な動きに似てはいるが、それよりもさらに洗練された動きであり、最早剣神が舞うかの如くであった。
先ほどと同じ様に、剣を横薙ぎに振った状態で動きを止めた士郎は、先ほどとは違って顔を汗で濡らし、息を荒げながら呟いた。
「経験憑依による再現率が、上がっている」
士郎は驚きながら姿勢を正した。
経験憑依による再現率は、せいぜい二割がいいところだったが、下手したら五割は出来ているな。
士郎は左手の甲に刻まれている、剣を握った際から光続けているルーンを見ながら呟く。
「十中八九これが原因だろうな」
士郎は朝日が昇り始め、明るくなってきた空を見上げながら苦笑して、踵を返し、城の様な学校に向かいながら自分に言い聞かせる様に呟いた。
「まぁ、あれこれ考えても仕様がないか」
そう言って、魔法学院に向かって歩いく士郎の後ろには、半径十メートルに渡り根元ギリギリから刈られた草原が、朝日に照らされながら風に揺られていた。
士郎は、音も無くルイズの部屋に入り込み、ルイズが眠っているベッドの近くに置かれている、洗濯物が入った籠を手に取り、入ってきた時と同様に、音も無く部屋から出ていった。
部屋から洗濯物籠を取ってきた士郎は、朝の訓練に行く前に、寮の屋根から確認した洗濯場であろう場所に向かって歩き始めた。
もうそろそろ洗濯場に着くだろうと思った士郎の目の前に、洗濯物が手足を生や
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