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剣の丘に花は咲く 
第一章 土くれのフーケ
第四話  誓い
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で、科学は未来に疾走するもの」だという話しを思い出した。

 やはり俺達の世界の魔術は、この世界の魔法とは根本的に違うようだな。

「そこで今から皆さんには、『土』系統の基本である、『錬金』の魔法を覚えてもらいます。一年生のときにできるようになった人もいるでしょうが、先ほど言ったように基本は大事です。もう一度、おさらいすることに致しましょう」

 シュヴルーズは、石ころに向かって杖を振り上げた。そして短くルーンをつぶやくと、石ころが光り出す。光が収まった時、机には石ころはなく、代わりにピカピカと光る金属があった。

「ゴゴ、ゴールドですか? ミセス・シュヴルーズ!」

 キュルケが身を乗り出し、裏返った声をあげた。

「違います。これはただの真鍮です。ゴールドを錬金できるのは『スクウェア』クラスのメイジだけです。私はただの……」

 もったいぶったようにまた咳をして、シュヴルーズは言った。

「『トライアングル』ですから」

 『トライアングル』と『スクウェア』……数が増えるほど、階級が上がるというとこか?

 士郎が壁に寄りかかりながらも授業を聞き、この世界について人知れず学んでいると、教室が騒然とし始めたことに気付いた。

「誰かに『錬金』をやってもらいましょうか……そうですね、ミス・ヴァリエール、あなたにやってもらいましょう」

 シュヴルーズがそう言ったとき、教室が再び騒然となった。
 不穏な空気を、士郎は敏感に感じ取る。

「先生! やめといたほうがいいと思いますけど……」

 キュルケが、珍しく困ったような声で言った。

「どうしてですか?」
「危険です! ルイズがやるくらいならあたしが……」

 キュルケの言葉に、教室の全員が頷いた。

「危険? 『錬金』の何が危険なのですか? ミス・ヴァリエール。失敗を恐れていては何もできませんよ。やってごらんなさい」

 ルイズは一度目を閉じた後、後ろに控えている士郎を見て、教壇に立つシュヴルーズに振り返った。

「やります!」

 ルイズは、緊張と決意を張りつけた顔で立ち上がると、教壇へ歩いて行く。 士郎は何も言わず、様子を見守る。

 「ルイズ、やめて!」

 顔面蒼白になったキュルケの制止にも、ルイズは聞く耳を持たない。恐怖にかられたクラスメイトたちが、一斉に机の下に潜る。その様子はまるで、避難訓練でもしているようであった。
 ルイズは教壇に立ち、石ころ目掛け呪文と共に杖を振るう。
 振るわれた先の石ころが、光を放ちながら膨れ上がるのを感じたルイズは、目を閉じ、爆発から身を守るかの如く縮こまったルイズは心の中で自分を罵倒した。

 何でっ! 何でダメなのっ、やっぱり……
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