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剣の丘に花は咲く 
第一章 土くれのフーケ
第二話 あなたのなまえは……
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い音を立てながら開いた……と言うか壊れた。

「ハァッ……ハァッ、ハァッ、ハァ」

 先程まで無事であったドアがあった場所には、一人の少女が立っていた。
 年は、十五、六歳位だろうか、黒いマントと、マントの下に着た白いブラウス、グレーのプリーツスカートを汗で濡らしながら、顔から滴る汗を拭いもせずにこちらを凝視している。

「はぁっ、はぁっ、はぁ……」

 桃色がかったブロンドの髪を汗で濡らし、透き通るような白い肌を上気させ、その滑らかな肌の上に汗を流しながら、鳶色の瞳でこちらを見つめている。

「はぁ〜はぁ〜」

 一言で言うならば、美少女が息を荒げながらこちらを見ていた。





 ――騎士――

 部屋に飛び込み、開いた窓から差し込む光に照らされた男を見た瞬間、頭に浮かんだ言葉がそれだった。
 座っていることから、正確な身長は分からないが、百八十サントは越えているだろう。看病した際に見た傷だらけの鍛え上げられた浅黒い身体に、赤い外套と甲冑を身に付け、一見して只者ではない雰囲気を漂わせながらベッドの上に腰掛けた男は、まるで鷹の様な鋭い眼でわたしを見つめている。
 咄嗟に目を反らしたくなった弱気を、荒い呼吸と共に飲み込み、睨み返す。

 こいつが……私の使い魔……。

 あの広場で召喚した、血だらけの死にかけた男を保健室に運び込み、水の秘薬をモンモランシーに頼み込み使ってもらい、状態が落ち着くまで必死に看病した。
 授業に出るようになった私に対し、周りの連中が平民を召喚しただの、歩いていた平民が爆発に巻き込まれただけ等言ってきたが、私にはそれを気にするだけの余裕はなかった。
 なぜならば、召喚には成功したが、まだ契約をしていなかったからだ。
 それに気付いた私は、コルベール先生の監督の下契約を交わした。
 それが今朝のことだった。
 結果は、爆発も起こらず無事契約は交わされた。
 コルベール先生は、彼の左手の甲に刻まれたルーンを写しとると、授業に出るように言って、保健室から出ていった。
 それからコルベール先生によって、彼が目を覚ましたことを告げられるまでに受けた授業は、全くと言っていい程頭に入って来なかった。
 そして今、自分の目の前には、眠っていた彼が目を覚ましてベッドの上に座っている。
 ルイズは落ち着いてきた呼吸を整え、ゆっくりと静かに深呼吸をした後、目の前に座っている男に話し掛けた。
 
 お、落ち着きなさいルイズ・フランソワーズ・ル・ブラン・ド・ラ・ヴァリエール! 最初が肝心よっ、毅然とした態度で挑むの! 舐められてはダメっ! い、いくわよ……っ!

「い、いくら何でも寝すぎよっ! どれだけ寝ていたか分かっているのっ!」

 こちらを見つめて(睨み付けて)いた
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