暁 〜小説投稿サイト〜
剣の丘に花は咲く 
第一章 土くれのフーケ
第二話 あなたのなまえは……
[2/8]

[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話
つき、自分の身体を見下ろした。
 傷だらけだが、鍛え上げられた浅黒い身体が見える。
 そう、傷だらけの身体が見えるのだ。

「服を着ていない?」

 気を失うまでは着ていたはずの外套と甲冑が脱がされ、今身に付けているのは下着のみだった。
 抗魔力の低い、自分を身を守るために着ていたものが脱がされ、身体に見知らぬルーンを刻まれている。  

「分からないことばかりだな」

 男がベッドから降りようとすると、ガチャリとドアが開く音が響いた。

「えっ」
「あっ」

 閉まっていたドアが開き、ドアの向こうから入ってきた、髪が長く眼鏡を掛けた女性と目が合い、両者の口から間の抜けた声が漏れた。

「良かった。気が付かれたんですね」

 女性は、驚いた顔をすぐに笑顔に変え、男に話し掛けながら近づいていく。

「え、ええ、今さっき気が付いたばかりです」

 男は近づいてくる女性に対し、その動きに注意し、いつでも動けるよう、さりげなく体勢を整えた。

 ……この人。

「あなたは、大怪我を負って死にかけていたんですよ。もし、ミス・ヴァリエールが、モンモランシーさんに頼み込んで、水の秘薬を使っていなければ死んでいたかもしれないほどの」

 水の秘薬? なんのことだ?

「怪我が治っても、3日間も眠り続けて、ミス・ヴァリエールもとても心配していたんですよ」

 3日間か……随分と寝ていたようだな。しかしミス・ヴァリエールか? 一体誰だ?

 女性の言葉に疑問を浮かべながらも、油断することなく、女性の動作に注意していた。
すると、女性は男が座っているベッドに近づく足を突然止めると。

「あっ、あなたが起きたことをミス・ヴァリエールに伝えて来なければっ」

 と言い、ベッドに近づく足を止め、踵を返し、入ってきたドアへ小走りで向かった。

「えっ? ……え〜と……あの、すいませんっ!」

 急に小走りでドアに向かう女性に対し、男は慌て声を掛けた。

「俺は、どうしたら?」
「あっ、ああ、そこで待っていて下さい。ミス・ヴァリエールを呼んで来ますので」

 一瞬体を強張らせ立ち止まった女性は、振り返ると、男に対しそう答え、直ぐにドアに向かおうとしたが。

「あのっ! すみませんが、そのミス・ヴァリエールと言う人は一体誰なんですか?」

 そんな男の質問に足を取られ、転けそうになりながらも振り返り。

「……あなたを召喚した人ですよ」

 と、額に血管が少し浮き出た顔でそう答え、これ以上話し掛けられない内にといった感じで、逃げるように部屋から出ていった。
 女性が出て行った部屋には、一人取り残された男が、

「召喚って……何でさ」

 鳩が豆鉄砲を撃たれたような
[8]前話 [1] [9] 最後 最初 [2]次話


※小説と話の評価する場合はログインしてください。
[5]違反報告を行う
[6]しおりをはさむしおりを挿む
しおりを解除しおりを解除

[7]小説案内ページ

[0]目次に戻る

TOPに戻る


暁 〜小説投稿サイト〜
利用規約/プライバシーポリシー
利用マニュアル/ヘルプ/ガイドライン
お問い合わせ

2024 肥前のポチ