第一章 土くれのフーケ
第二話 あなたのなまえは……
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つき、自分の身体を見下ろした。
傷だらけだが、鍛え上げられた浅黒い身体が見える。
そう、傷だらけの身体が見えるのだ。
「服を着ていない?」
気を失うまでは着ていたはずの外套と甲冑が脱がされ、今身に付けているのは下着のみだった。
抗魔力の低い、自分を身を守るために着ていたものが脱がされ、身体に見知らぬルーンを刻まれている。
「分からないことばかりだな」
男がベッドから降りようとすると、ガチャリとドアが開く音が響いた。
「えっ」
「あっ」
閉まっていたドアが開き、ドアの向こうから入ってきた、髪が長く眼鏡を掛けた女性と目が合い、両者の口から間の抜けた声が漏れた。
「良かった。気が付かれたんですね」
女性は、驚いた顔をすぐに笑顔に変え、男に話し掛けながら近づいていく。
「え、ええ、今さっき気が付いたばかりです」
男は近づいてくる女性に対し、その動きに注意し、いつでも動けるよう、さりげなく体勢を整えた。
……この人。
「あなたは、大怪我を負って死にかけていたんですよ。もし、ミス・ヴァリエールが、モンモランシーさんに頼み込んで、水の秘薬を使っていなければ死んでいたかもしれないほどの」
水の秘薬? なんのことだ?
「怪我が治っても、3日間も眠り続けて、ミス・ヴァリエールもとても心配していたんですよ」
3日間か……随分と寝ていたようだな。しかしミス・ヴァリエールか? 一体誰だ?
女性の言葉に疑問を浮かべながらも、油断することなく、女性の動作に注意していた。
すると、女性は男が座っているベッドに近づく足を突然止めると。
「あっ、あなたが起きたことをミス・ヴァリエールに伝えて来なければっ」
と言い、ベッドに近づく足を止め、踵を返し、入ってきたドアへ小走りで向かった。
「えっ? ……え〜と……あの、すいませんっ!」
急に小走りでドアに向かう女性に対し、男は慌て声を掛けた。
「俺は、どうしたら?」
「あっ、ああ、そこで待っていて下さい。ミス・ヴァリエールを呼んで来ますので」
一瞬体を強張らせ立ち止まった女性は、振り返ると、男に対しそう答え、直ぐにドアに向かおうとしたが。
「あのっ! すみませんが、そのミス・ヴァリエールと言う人は一体誰なんですか?」
そんな男の質問に足を取られ、転けそうになりながらも振り返り。
「……あなたを召喚した人ですよ」
と、額に血管が少し浮き出た顔でそう答え、これ以上話し掛けられない内にといった感じで、逃げるように部屋から出ていった。
女性が出て行った部屋には、一人取り残された男が、
「召喚って……何でさ」
鳩が豆鉄砲を撃たれたような
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